今年期待をよせる若手選手2012(3) 山本和作

  • 舎人
    2012年01月22日 07:25 visibility1222





































今年期待の若手選手の話3回目、山本についてです。昨年の山本は地獄から天国、そして地獄と急勾配を行き来するジェットコースターのようなシーズンでした。リハビリ明けに始まり、打撃開眼、ファームのレギュラー定着、支配下登録、チームの本塁打王、後一歩のところ一軍、再び怪我、手術、育成再降格・・私も長いことファームの選手を見てきましたが、ここまで波瀾万丈な選手は見たことがありません。もう一度山本のこれまでを振り返ることから話を始めましょう。

山本は大田や橋本たち2008年のドラフト入団選手でした。元々、所属していた大学の関西六大学リーグで1年生ながら首位打者になるなど、シュアな打撃が注目しれていました。しかし、ドラフト時の評価としてはCレベル、同タイプで同期入団の仲澤のワンランク下の選手としての見られていたようした。ただ、シュアな打撃の中に一発長打の魅力も秘めているらしく、以前、育成選手特集をやっていた報道ステーションでは長打力と対左投手の打撃を期待されて入団したなどと紹介されていました。






































しかし、私が山本たち2008年ドラフト組のルーキー時のことを振り返ってみると一番印象の薄かったのが山本でした。1年目の山本はイースタンにおいて31試合の出場、打率.212というものでした。仲澤の打率.319にははるかに及ばず、大田の.238にすら遅れをとっていたのです。唯一、可能性を感じたのはチャレンジマッチにおける30試合で打率.351、シリウスにおける17試合で打率.333といった打率の高さくらいでした。しかし、長打を期待されていた割には本塁打は公式戦、非公式戦合わせても1本もなく、本当に大きいの打てるの?といった首を傾げたくなるような選手だったのが山本なのです。

そして、2年目を迎えます。同期入団からの遅れを取り戻すべく奮起する山本でしたが、こともあろうか選手生命左右する大ケガをしてしまいます。屋内練習場の芝に足を取られ転倒したことによる左膝前十字靭帯断裂でした。すぐに靭帯再生手術をするものの、プロ入り2年目は長いリハビリの日々でした。ケガをしたニュースはほとんど流れなかったため、私はすっかり山本のことなど忘れていたし、なんで試合に出ないのか不思議に思っていたものの、おそらくどこかケガをしてしまったのだろうと頭のどこかで思っていた程度でした。選手生命を左右するほどの大ケガだったにもかかわらず、人々の関心は薄く、山本はひっそりとリハビリに入るのでした。幸いなことにそのリハビリは思いの外順調で、9月の半ばには実戦復帰、非公式戦ながら試合にも出場します。崖っぷちながら少しずつ光明が見え始めた2年目でした。






































そして、昨年です。私はケガから復帰したことはなんとなく伝わってきてはいたものの、育成の本流から外れ、第2二軍を実施するための員数合わせだろうといった程度の認識しか山本のことは考えていませんでした。それが、打撃を改造したことによって春先から絶好調!抜擢された春季教育リーグでいきなり本塁打を放ちます。打撃によるアピールはさらに拍車がかかり、4月にかけて打率は大きく3割を超えていました。以前に比べバットを短く持って打席に入っています。これはキャンプで思うようなスイングとバットコントロールが出来ないで悩んでいたところ、最終的に行き着いた先というのがバットを思い切り短く握るというものだったとか。これによって振りも鋭くなり、バットコントロールが良くなったことが打撃好調の要因のようでした。さらに、シーズン当初はファーストしか守れなかった守備が、サードやショート、セカンドとこなすようになり、ケガ明けのシーズンとは思えないパフォーマンスを見せたのでした。山本は「リハビリの成果で、以前よりも下半身が強化された気がする」と話していました。そして開幕から2か月ほど経った5月、二軍の首脳陣の強い推薦があってついに支配下登録を果たしたのでした。

支配下登録後の山本は打率が常に3割弱をキープする安定した活躍を見せましたが、なぜか一軍に呼ばれません。それどころか、ファームでも試合に出たり出なかったりの日々が続きます。指定強化選手や外国人を優先的にスタメン出場させたために弾き出されてしまったからでした。また、今振り返ってみると、どこか体調も万全ではなかったのかもしれません。

山本が一軍に呼ばれたのはイースタンの公式戦が終了した10月に入ってからでした。一軍の合同練習に参加することができたのです。出場選手登録した訳でもなく、たった1試合のみのことでしたが、来季へ向けての手掛かりを掴んだ出来事でした。

再びファームに戻った山本は宮崎で行われていたフェニックスリーグに参加します。そこで丸毛らと来季の一軍昇格へ向けて切磋琢磨したのでした。しかし、山本に再び悲劇が襲います。10月27日のオリックス戦で自打球を左膝に当て、負傷してしまったのです。これが思いの外ひどく、左膝蓋骨骨折という重症でした。そして、11月に入るとすぐに手術、全治はリハビリまで含めると数ヶ月です。そして、情け容赦のない球団は山本を再び育成選手に降格させたのでした。






































山本和作イースタン成績
2009年 031試合 069打数 014安打0本塁打10打点0盗塁01四死球 打率.212 長打率.318
2008年 出場なし 
2011年 116試合 360打数 101安打9本塁打45打点8盗塁16四死球 打率.281 長打率.417

ざっと、プロ入り後の山本を振り返ってみましたが、まさに波瀾万丈です。しかし、ケガさえ直れば、当然支配下に再登録されるでしょうし、昨年の活躍からすれば、一軍定着だって夢ではありません。私が昨年山本のことについて書いたことを過去の日記から引っ張り出してみたのですが、何の関心のなかった選手に徐々に関心を深めていったことが分かります。

3月6日
打つ方は今日も冬眠から覚めていませんでした。前の日5安打で、この日も5安打です。しかし、その中で光っていたのは途中出場の山本です。1点ビハインドで隠善の代打として出場すると左腕の山口の初球をレフトポール際に同点本塁打です。最初ファールかどうか分からず、バッターボックスの辺りでウロウロしていました。その後、三塁塁審がグルグルと手を回すと「あれっ」と言った感じで頭を掻きながらベースを一周していました。山本は3点ビハインドの八回にも強烈なピッチャー返しのタイムリーヒットを打ってアピールしていました。

3月26日
育成枠の山本は本来なら第2ニ軍の方に行くはずなのでしょうが、結果を出していることで(第1)二軍に帯同しています。この日は左腕の塩見が先発ということでスタメンで起用されました。山本も加治前と似た感じのバッターで、オープン気味のスタンスからインステップして打球を捉えています。山本に感心させられる事は非常に変化球を打つ事が上手い事です。育成選手でこの器用さはこれからの支配下入りに可能性を大きく感じさせます。ポジションの都合で今はファーストを中心に守っていますが、サードなどの他のポジションでのプレーを見てみたい気がします。

4月9日
山本は4打数1安打ながら、その1本がタイムリーになりました。打ったのはアウトローに逃げて行くスライダーで相変わらず変化球打ちの上手さを見せていました。スラッガータイプで入団したはずが、バットを短く持ちコンパクトに振り抜くことで新境地を開拓したのかもしれません。

5月1日
加治前と山本は開幕時の好調な時期に比べるとやや落ちてきた感じでしたが、それでも存在感はあるバッティングをしていました。2人ともバットを短く持ちセンター返しを常に意識している印象です。(中略)いつ一軍に呼ばれてもいいように準備をしておいて欲しいと思います。

5月4日・5日
山本は長打を捨てアベレージヒッターを目指すような打撃スタイルでしたが、ここにきて本塁打を量産しています。広角に大きいのが打てるのが山本の特長です。7日の試合ではサードを守っていましたが、これはいよいよ支配下入りのテスト段階に入ったのかもしれません。

5月14日

5月24日
前の日に支配下登録が叶った山本と福元がそれぞれスタメンで登場していました。山本は2安打、福元はこの日は無安打でした。山本の1本目のヒットは外角のスライダー、2本目は真ん中付近のストレートでした。変化球に強く、崩されても喰らい付いていく山本のプレースタイルは一軍でもきっと通用するでしょう。早く一軍でプレーする姿を見せて欲しいと思います。福元もこの日は結果が出なかったものの、次の25日の試合では2安打を放ちアピールしたようです。

7月17日
打つ方では加治前、山本、中井やベテラン矢野といった右バッター衆が揃ってマルチヒットを放ちました。この試合に限ったことではないのですが、今のイースタンは右バッターが左バッターよりもはるかに目立っています。大田が昇格してもこの構図は変わりません。それなのに今年シーズンインしてから補強をしたバッターは高橋信も大村もフィールズもいずれも右バッター。これはやや偏りも感じてしまいます。今ファームから昇格の推奨を受けるに値するのは橋本や田中といった左バッターよりも加治前や矢野といった右バッターの方ですが、一軍では当分右バッターの需要はなさそうです。そのあたりやや編成のちぐはぐさを感じてしまいます。

8月6日・7日
もう1つ、話しておきたいこと。山本についてです。小山が先発した試合で打者として最も目立っていたのは山本でした。本塁打を含む猛打賞です。速い球にも変化球にも強く、長打力もある。何より思い切りの良さが持ち味です。現在、チームトップの7本塁打。打率もチームトップの.290、これはリーグ4位の好成績です。しかし、どうも扱いが軽すぎないかと思います。6日の土曜日の試合は途中出場で1打席のみ、7日の日曜日はスタメンでしたが打順は9番です。その後の試合でも9番だったり、途中出場だったり、成績に見合う扱いを受けているとは思えません。本来はサードの選手です。しかし、大田なり中井なりの育成の本流の選手が優先起用されることで、ショートやファーストを守ってきました。それがここにきてライアルなりフィールズが調整でやってきてサードを守り、2人同時スタメン起用になるとサードの中井が弾き出されショートに回り、ショートだった山本が玉突きでスタメンから弾き出されてしまうことになったのです。私は思い入れからいったら山本よりはるかに中井の方が上ですが、今の状態でどちらの選手を弾くべきかといったら山本を残し、中井を外すべきだと思います。(と言うか、ライアルとフィールズの同時スタメン起用こそ止めて欲しいことですが・・)今の山本は一軍に抜擢されるに相応しいと思うし、ファームに置いておくにしても、スタメンから外されたり、9番だったりはどうにも解せない思いになります。もしもその理由がポジションの問題だけだとしたら、何とかして欲しいものです。

8月13日
最期に山本について。この試合ではスタメン落ち。しかし、途中出場で打席が回ってくると、何事も無かったようにタイムリーヒットを放っていました。前の日記でも話しましたが扱いが軽過ぎます。これではなんのために日々頑張っているのか分からなくなります。一軍での出場は枠の関係で無理だとしても、せめて二軍のスタメンくらい保証してあげて欲しいと思います。

9月10日
土曜日の試合の話の最期、福元と山本の二遊間についてです。元々福元はショートの選手、山本はサードの選手です。それが強化指定選手や外国人によって弾き出され、主に福元はセカンド、山本はショートを守っているのです。
福元は守備の選手として入団した経緯があるので、セカンドの守備もそつなくこなしていますが、山本は打撃を見込まれて入団した選手なので、慣れないショートの守備は相当苦労したことと思います。それでも最近は非常に動きが良くなり、ファインプレーも数多く見られるようになりました。
この2人、今年五月に揃って育成選手から支配下登録されました。しかし、その後どうした訳か活躍しても、一度も一軍に呼ばれることなくシーズンが終わろうとしています。支配下入りの際、一軍の要望のないままにファームからの要望のみで支配下登録が決定されました。このことが今もって引っかかっているのかと勘ぐってしまいたくなります。しかし、彼らが必死でプレーする姿はいつか一軍の首脳陣の目にも留まると信じたいと思います。

9月24日
(前略)打点は中井の他に大田も山本も記録しました。(中略)山本も一時の調子の良かった時期に比べると大振りが目立ち、かなり打ち損じが目立ちます。しかし、金曜日の試合では決勝の本塁打を放ったり、この日もランナーを2人を置いた場面でダメ押しとなるタイムリーを放っています。中井や大田同様の集中力を感じました。






































日テレG+で川相二軍監督が昨シーズンを振り返っていましたが、その中で昨年のファームで大きかった出来事として山本の活躍を挙げています。

「今、二軍の中で相手のピッチャーが一歩間違えたら、長打を浴びるのではないかというようなスイングができてるのは山本だと思いますンで、えー後は、まぁ、守備の方で最初ファーストしか守れなかったんですけど、徐々に、えーショートを守れるようになって、まぁ、彼がショートを守れるようになったことが非常に、まぁ、今年のジャイアンツの二軍としては非常に、えー大きな出来事ではなかったかなぁと思います」

山本選手がショートを守れたことが、なぜチームにとっても大きな力になったのですか?

「まぁ、正直、二遊間をきっちり守れる選手っていうのが非常に少なくなっていたので、まぁ、その中で誰が守れるだろうかってことで山本がね、まぁちょっと候補に挙がったんですけど、まぁ最初はどうかなって思ってましたけど、まぁ思った以上に、あのー守りましたし、えー徐々に上手になってきてですね、まぁ今や、どうですかね二軍の中では、そのー守備でも貢献できる選手になりつつあるンじゃないかなと思います。はい」

自分が推薦して支配下登録させたこともあるのでしょうが、非常に高い評価をしています。それならば、なぜ夏場にもっと優先起用しなかったのかは謎として残りますが、まぁ、あまり詮索しないでおきましょう。しかし、それにしても山本が昨シーズン少しでもいいから一軍で試合に出ていたらと思ってしまいます。ファームに思い入れの強い私でさえ、何の期待もしていなかった選手ですし、抜擢に躊躇するのは分かりますが、ライアルやフィールズに与えたチャンスの何分の一でも山本に与えていれば、ペナントレースやシーズンオフの補強も違ったものになったような気がします。

それでも原監督は山本のことが気になっていたらしく、シーズン終盤に一軍の合同練習に参加させて、どんな選手か自分の目で確かめています。G+の特集によると山本は監督に声もかけてもらったらしいです。

「順調に、まぁファームでも結果を残しているので、まぁ今日見たいなと思ってたっていうふうに、まぁ話をしていたので、まぁ後は思い切って練習してくれっていうふうに言われました」






































今シーズンの山本はまず、ケガを完治させることが先決です。そして、試合に出てしっかりとアピールをし支配下再登録をしなくてはいけません。特に守備がケガ以前に比べどれだけ戻ってきているかが大事だと思います。山本は元々、スローイングには自信があると話しています。問題は捕る方ですが、昨シーズンは森脇コーチに師事してみるみる上達したとか。その森脇コーチも移籍していない今シーズン、リハビリから始めなくてはいけない守備が一番の懸案事項だと思います。

ケガが完治して、守備で昨シーズン同様の動きができるのならば、今年こそ一軍定着が見えてくると思います。一軍で重要な課題の1つは、坂本のバックアップです。坂本の不測の事態に備えることと、刺激を与える存在が必要なのです。だからその候補としてロッテから高口を取ったりした。しかし、高口では明らかに役不足のような気がするし、他を見渡しても坂本の代役に足り得る選手は見当たりません。寺内などは守備で代役を務められても、総合力では何の刺激にもならないと思いますし、中井のショートもピンと来ません。私は山本が順調に回復して、一軍に抜擢されれば、坂本に刺激を与えられる選手になり得る一番手の選手ではないかと思うのです。

ともあれ、これだけ波瀾万丈な選手なだけにどうしても思い入れを持ってしまいます。このドラマの幕引きはなんとかハッピーエンドで終わって欲しいと思います。動画は未公開を含む20本のヒットと1盗塁、4度のファインプレーで構成されています。

山本和作 2011年の活躍! ←New

次回このシリーズ、中井について。乞うご期待!

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