それでも私が辻内の成功を信じる理由

  • 舎人
    2010年12月31日 04:47 visibility1852



 



 


今年最後の日記の更新です。辻内のことを話しておかないと、年が越せません。



 


12月12日の日記で‘辻内の言葉力’という題材で話をしましたが、あれだけを読むと辻内がまるでプロとしてやっていくだけの逞しさがなく、将来性が0とも取られかねない印象を持たれたかもしれません。私としては、辻内のこと心配するあまり老婆心的な思いから話した次第ですが、マイナス要素だけ並べたのでは確かにネガキャンと同じです。そこで今日は辻内の成功する要素、技術的な面での成長など、プラス面について話してみたいと思います。


 



辻内についてはドラフト時や入団当初色々な本や雑誌でテクニカルガイドが出て、問題点が指摘されていました。月刊ジャイアンツ2006年2月号では辻内のことについて特集が載っているのですが、テクニカルガイドとして鹿取さんが辻内の投球フォームについて解説をし、問題点を指摘しています。要約するとだいたい次の通り・・


 





 



 







 


辻内はフォームの癖を直せ、それが一軍への近道だ!


松坂投手がプロ1年目から16勝をマークできたのは、直球とスライダー、カーブなどの変化球を同じ腕の振り、同じフォームで投げられた、ということが大きいと思います。普通の高校生は変化球を投げる時にどうしても緩んでしまう。元々、しっかりとしたメカニズムで投げていた松坂だからこそできたことでした。


この「同じフォームで」というのが、高校生には第一の課題なのです。辻内君の場合は、05年の夏の甲子園で見た感じでは、直球とカーブの腕の振りがはっきりしていました。やっぱり変化球の時は緩むんです。プロが見ればわかること。でも、これは誰もが通る道なんですよ。その修正ができれば、相手は何を投げてくるかわからない。速い球がもっと生きるし、さらに違う球種が加われば全く違ってきます。


(中略)


辻内君は、体力面は多分、プロのレベルに近いと思うので、すぐに技術面の強化に入れそう。通常、2~3か月継続して練習すれば、球種によるフォームの癖は矯正できる。早い子なら1か月で直せるかもしれない。


(以下略)



投球フォーム分析 上体の強さが勝っている印象


体全体のパワーは、松坂投手レベルだと思います。パワーがあるゆえに、やや強引に腕だけで投げてしまうところがある。上体の方が、下半身よりやや勝っているんじゃないかと思います。下半身をうまく使えていないというほどでは決してないのですが・・


それと、グローブサイドの右腕の使い方。右側にしっかりと‘壁’をつくらないといけない。このままだと、球が速くても、50~60球を過ぎれば低めのストライクゾーンに行かなくなる可能性があります。


でもプロの指導で、上半身と下半身のバランスが取れ、溜めた力をスムーズに伝達するというフォームのメカニズムが出来上がれば、制球は安定します。課題はリリースの瞬間の、上と下のタイミング、バランスが違うということだけですから。



 


鹿取さんは辻内の投球フォーム問題点として、変化球を投げる時にフォームが緩むという問題点を指摘しています。しかし、これは誰にでもあることで、至極簡単にその問題点は矯正できるとも話しています。当時の色々な資料を漁っても辻内のこのように変化球を投げる時のフォームの緩みを問題点として指摘するものはあっても、むしろ辻内の投球フォームのことはほめたものの方が多く、変な癖がなく非常に良いというものが目立ちます。流しのブルペンキャッチャーの安部さんは野球小僧で辻内のフォームについて「最後の最後まで左半身を隠してくる、脅しのない端正なフォーム」と話しています。


 


しかし、鹿取さんは連続写真によるフォーム分析で上半身と下半身のバランスの悪さを指摘していますが、これに関しては色々な資料にそのことが載っていて、当時の中学野球小僧には上半身と下半身のバランスの悪さを懸念した監督さんが、辻内にだけ他の投手の倍の下半身強化メニューをさせたという話が載っています。それによると「辻内メニュー」とは、球場周辺にある50~60メートルのアスファルト道路を使っての坂道ダッシュを100本。高さ約50~60センチのネットを左右に飛び越える動きをセットに分けて計500回。ポール間走に腹筋、背筋・・・。どの投手よりも走り、飛び、もちろん投げさせられたそうです。


 


しかし、なぜ上下のバランスが悪いのか?下半身が弱いのか?その疑問点を当時メジャーリーグのメッツでスカウトをしていた大慈彌功氏はこのように指摘しています。



 


投球フォームの中で、「腰の使い方が悪い」「下半身が硬い」という声がありますが、これは下半身が弱いのではなく、股関節の可動域の問題だと思います。彼が1年目から、柔軟性を高めたり、股関節の可動域を保つというコンディショニングをやっていれば、クリアされる問題です。



 


同じような話を2005年5月発売の「アマチュア野球vol.3」で辻内にインタビューをした評論家の小関さんが書いています。



(前略)


すごいなと思う反面、何かが足りない。場所を移動して一塁側からそのピッチングを見ると、ステップ幅が狭いことに気がついた。プロの投手なら7足半とか7足が普通である。しかし辻内は明らかにそれより狭い。


―ステップ幅が狭いんだけど、気が付いている?


辻内 はい。5歩半です。体が固いんで。


―監督から何か言われる?


辻内 もっと股関節を柔らかくしろと。風呂上りにストレッチしたりしてるんですけど、なかなか柔らかくなりませんね。


西谷浩一監督(35)にも聞くと、「5足半ということはありません、6足に少し足りないくらいですね。でも、徐々に仕上げていこうと思っているんです。入ったときにくらべれば、これでも随分良くなっているんです(笑)」と、長い目で見守っていこうという姿勢だ。


(中略)


欠点に注目して、それを選手に指摘するが、性急に矯正せず、上のレベル(大学、社会人、プロ)で直してもらえばいい、くらいのスタンスが西谷監督の持ち味である。中村剛也(西武)をはじめ、西岡剛(ロッテ)も、そういう監督によって大きく羽ばたこうとしている。


さて辻内のピッチングだが、前に書いた「取材のために用意した質問」―右肩が上がる、右肩の開きが早い、腕の振りが体から遠い、というマイナス面は、このステップの狭さが原因と言ってもいい。ステップがもっと広ければ後ろに重心が残らず、体がもっと沈み、ボールを前でリリースすることができるはずだから、辻内が課題にしている変化球のコントロールだって良くなるはずである。


 













































 


「アマチュア野球」の別の号では西尾典文さんが、上半身の使い方の素晴らしさを話しつつも、このように指摘しています。


 



「ステップ幅が狭く、リリースからフォロースルーにかけて右足が突っ張り、体重の後ろ残りが見られます。このためリリースポイントが頭の真上で、長くボールを持つことができない」


 



辻内は今まで、ケガが多い、気が弱い、コントロールが悪いなど様々なことを問題点として言われていますが、要するにそれらの問題点とは全て股関節の固さに端を発しているという結論に行き着くのです。投手にとって股関節の重要性とは何か?つまりは投球動作の上で前足の上げ下ろしから着地に至る動作において、地面からもらった力を逃すことなくボールに伝えるために重要なのが股関節なのです。また、股関節の可動域があればあるほど、体重移動をスムーズに行うことができ、広いステッフ幅で上体を沈ませて投球することができるのです。広いステップの方がコントロールも安定し、スタミナが長続きします。変化球が抜けたりすることなく、キレの鋭いものになります。また、股関節が固いということは自ずと上半身に頼った投球になってしまい、肩や肘の故障の原因になったりするのです。










 













このように入団時問題点を抱えていた辻内が今どうなったのか?当時と違いなかなか辻内のことを解説した資料というものはありません。ところが今年になって素晴らしい本が出たのです。成美堂出版というところから出版された「ジャイアンツに学ぶ勝つためのバッティング・ピッチング」という本は、ジャイアンツのさまざまな選手たちのテクニカルガイドが載っているのですが、その中に辻内のことも載っているのです。そこには1ページを割いて辻内の連続写真が載っており、解説は橋本清さんがしています。



 


「将来の左のエース候補、全身の筋肉が強くそれを生かした強い腕の振りが特徴。腕を振る時にムチのようなしなりがあまりないので、少しずれると制球を乱すこともあるだろう。(以下略)」



 


これはどうやら昨年のフレッシュASの時のもののようですが、高校時代よりもはっきりと優れたものがグローブを持つ右手の使い方。高校時代に鹿取さんに指摘されていた右側に‘壁’を作るという課題をしっかりと克服しています。また、ステップ幅もまだまだ改善の余地があるとはいえ高校時代よりも広いものになってきています。



 


私は今年、辻内が投げているのを数回しか自分の目で確認していませんが、投球フォームは高校時代の立ち投げのようなものから、年々プロの投手のように上体が沈み込んだ安定感のあるものに変わってきていることは間違いないと思います。股関節とは体幹に直接連動したものであり、辻内の強い上半身がようやく体幹によってしっかりと支えられたものに変わるつつあることが分かるのです。もちろん今の状態は通過点に過ぎません。しかし、この調子でさらに股関節の可動域を広げ、体幹をしっかりとして投球できるようになれば、投球において結果も出てくるでしょうし、ケガだって少なくなってくると思います。



 


最後に、私は辻内という投手は無口でおとなしく、今風に言えば自分を表に出さない草食系の選手だとは思いますが、同時に非常に負けず嫌いの選手だと思っています。そうでなければ肘が壊れるまで投げ続けたりしないでしょう。自己アピールが下手なだけで、けっしてただの気弱な選手ではない。結果が出て自信が付けばかつての斎藤雅樹のように大ブレイクするかもしれない。そのことを来シーズンは結果という形で示してほしいと思います。


 


これで今年の日記の更新を終了します。オフミヤさんとの約束も果たせた。。。


それではみなさん、良いお年を・・(^.^)/








































chat コメント 

コメントをもっと見る

通報するとLaBOLA事務局に報告されます。
全ての通報に対応できるとは限りませんので、予めご了承ください。

  • 事務局に通報しました。