再読・南海ホークスがあったころ
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仲本
2013年05月04日 08:30 visibility308
みどりの日なので、緑帽子のチームネタでもう少し引っ張ります。
この本、以前日記で取り上げたような気もしますが、一連の「大阪クラシック」の流れに乗って読み返してみました。
前回「ホークス展」の日記で展示資料を写真で見たことがあると書きました。この本の図版と重複しているものがかなりあったからです。それも当然で、著者の永井氏(関西大学教授)は今回のホークス展の企画にも大きく関わっていたのでした。
ペナントレースやシリーズの勝敗の行方をプレーヤーその他現場の回想を交えて追った「戦記もの」ではありませんが、
本の中では球団史にも触れられています。南海ホークスのハイライトは1959年。日本シリーズではこれまで4たび敗れた宿敵・巨人を4連勝で打ち倒し、日本一を勝ち取ります。
エース・杉浦投手の述懐。「敵地から戻り、御堂筋パレードはさながら本懐を果たした赤穂四十七士の凱旋のようだった」
今は何の分野でも海外との競合で、日本国内でどこが一番の二番のと言っている時代でもありません。しかし当時は東京は大阪の目の上のタンコブ。にっくき巨人を倒しての悲願の日本一、となればそりゃ御堂筋パレードぐらいやりますよ。警備を担当する府警からすれば「特例中の特例」で実現したそうです(2000年代に入って阪神がリーグ制覇(日本一ではありません)で御堂筋をパレードしましたが、これは「ちょっとでも景気づくならなんでもあり」という当時の雰囲気の反映なのでした。一部には上記南海の経緯を踏まえて「あまりにもドラマ性がなさすぎる」と反対論もありました)。
しかし、栄光の物語が成就してもチームの歴史は続きます。この本の本題はいわば栄光の後にあります。ざっくりとまとめるのは難しいのですが、「そこにプロ野球チームがあった(そして失われた)として、チームのファンはどうやってできて、その時々でどんな行動をとったのかを探る」みたいな(うーんよくわからん)。
ホークスはやがて長期低迷期を迎え、「大阪を代表するプロ球団」の地位もいつの間にかいまやすっかり金満球団(!)になってしまったタイガースにとってかわられます。ファンたちもどこか屈折した思いを抱くようになります。そしてついに、大阪を離れる時がやってきました――。
学者さんの書いた本なので娯楽性はあまり期待できません。しかしながら資料としてはなかなか面白いものです。一度出版されてから文庫で再出版ということは反響もあったのでしょうね。
(参考:永井良和・橋爪紳也『南海ホークスがあったころ―野球ファンとパ・リーグの文化史』河出文庫/2010年)
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