檄は届くか
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HiRO
2006年05月27日 14:49 visibility65
BayStars 2 - 6 Hawks
「気持ちを前に出す」
王貞治がよく使う言葉だ。
その一般に見せる冷静さ、紳士的態度とは裏腹に、伝え聞くところ、実はかなり熱い。
連勝が少なく、まるでオセロゲームのように白星黒星が交互に続き、なかなか波に乗れない。チームの状態の悪さに、夏場以降の切り札、大道を早々に投入したにも関わらず、である。
福岡ドームでのBayStars戦初戦を落とした日、普段あれだけマスコミに丁寧に対応する王監督が、恒例の試合後の会見を行わなかった。
緊急ミーティング。
その王貞治が、選手達に問いかける。
「君たちは優勝する気がないのか。勝負の勝ち負けより、勝つという意志の強さが見られない。」
「今季は城島、バティスタが抜けたが、オレは戦力が落ちたとは思わない。」
城島、バティスタが抜けた穴は大きい。シーズン前から散々云われていることだ。
それに甘んじて良いのか?
戦力がダウンしたから、今のような戦いになるのは仕方ないのか?
今の位置もやむを得ずなのか?
その程度の志しかないのなら、さっさとプロの世界から足を洗ったほうがいい。
王貞治が言いたいのは、そういうことだろう。
その檄が効いたか、この日は結果的には快勝。だが、内容的にはまだまだ。
2回、信彦の2試合連続となる11号ソロで先制すると、6回には3四球による満塁のチャンスに柴原が浅い犠牲フライ。ボールがやや左にそれ、その逆をつく川崎の見事なスライディング。追いタッチとなりホームイン。うずくまり残念がる多村。
和田は、毎回のようにランナーを出しながらも、無失点だったのだが、2点のリードをもらった直後の7回に2失点でマウンドを降り勝ち星つかず。
その裏、山崎のタイムリーで勝ち越し。8回にも、3本の2ベースを含む4安打を集中させ3点を奪ってゲームを決めた。
藤岡に先日の1セーブ目に続き、1勝目が転がり込む。
名監督と云われる監督にも、戦術で勝つタイプ、選手のやる気を引き出すタイプなど様々。
詳細な分析に基づき細かく指示を与える監督もあれば、とにかくハッパをかけ選手たちを発憤させる監督もある。選手たちのモチベーションを高めその能力を巧みに引き出し個々の力の集合以上のチーム力にまとめ上げる監督もいる。
王貞治という監督は、そのいずれでもない。
目の前の戦力の、その持てる能力以上のものを無理に引き出そうとはしない。それよりも持てる能力自体を高めようとする。個々の自覚と成長を促し、常により高い頂を望む意識を持たせることで、選手とチーム全体の地力を上げていく。
監督としては非常に珍しいタイプだろう。
現有戦力を上手にやりくりして勝つタイプではないだけに、チーム作りにも時間がかかる。だが、だからこそ、そうして作り上げたチームは本当に強い、そして、その強さが持続するチームとなる。それは福岡での、王貞治の足跡が証明している。
このゲームが、今季のターニングポイントになるかもしれない。選手一人一人の意識にかかっている。
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