王道継承
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HiRO
2006年10月26日 01:10 visibility670
ちょっと前の話になるが、鷹の来季のコーチングスタッフが発表となった。
【1軍】
・監督:王貞治 89(66)
・総合コーチ:秋山幸二 88(44)
・内野守備走塁コーチ:森脇浩司 88(46)
・打撃コーチ:新井宏昌 81(54)
・投手コーチ:杉本正 85(47)
高山郁夫 82(44)
・バッテリーコーチ:大石友好 84(52)
・コンディショニング担当:山川周一 92(42)
【2軍】
・監督:石渡茂 76(58)
・内野守備走塁コーチ:鳥越裕介 71(35)
・外野守備走塁コーチ:井出竜也 78(35)
・打撃コーチ:山村善則 75(51)
・投手コーチ:藤田学 77(51)
・バッテリーコーチ:岩木哲 74(52)
・コンディショニング担当:川村隆史 95(41)
1軍の斉藤学投手コーチは、2軍の育成担当へ。
打線のテコ入れのため、2003-2004年、同職にあった新井コーチが復帰。自分としては今こそ手を着けて欲しかった投手コーチ、バッテリーコーチは、杉本コーチと大石コーチがそのまま留任となった。
2軍は激しく入れ替わった。
勝呂壽統内野守備走塁コーチ、河埜敬幸外野守備走塁コーチ、長冨浩志投手コーチ、中居殉也バッテリーコーチの4コーチが退団。
フロントの石渡茂編成部長が監督に。石渡さんは近鉄で2軍監督経験がある。
今季限りで現役を引退した鳥越が内野守備走塁コーチ、井出が外野守備走塁コーチに就任し、藤田学投手コーチ、岩木哲バッテリーコーチが復帰した。
今は、世代交代の過渡期でもあり、チームの大きな転換期といえる。
2軍のコーチングスタッフ入れ替えは、ここ数年、若手が出て来ていないことを考えると止むを得まい。若手を育てるのは、いくら教える技術が優れていても上手くいくとは限らない。鳥越、井出といった、ついこの前まで同じ立場でユニフォームを着ていた兄貴分の若さと情熱に期待したのだろう。
だが、何といっても、今回の組閣の最大のポイントは、今季、チーフコーチとして監督代行を務めた森脇浩司内野守備走塁コーチが、チーフコーチを外れ内野守備走塁コーチに専任、代わりに、総合コーチという立場で次期監督候補の秋山幸二2軍監督が1軍の総合コーチ、言わば、ヘッドコーチ格に昇格した点だろう。
これは、もし来季、王監督の復帰が遅れたり、万が一、また途中で戦線離脱をせざるを得ない場合、王貞治に代わり、秋山幸二がチームを指揮することを意味する。“王”道の継承が、今まで以上に、より鮮明に、現実味を帯びる。
しかも、単なる“ヘッド”格ではない。期待は多岐に渡る。
秋山に冠せられた、この「総合コーチ」を正確に表現すれば、「ヘッドコーチ、兼、外野守備走塁コーチ、兼、打撃コーチ」となろう。
島田さんがいなくなった後の、外野守備走塁コーチは不在。現役時代の通算、437HR、2157安打、303盗塁、11度のゴールデングラブ賞と、走攻守を極めて高い次元で兼ね備えた秋山は、外野守備、走塁のスペシャリストでもある。
そして、最大の課題、打力の向上という意味では、王監督、新井コーチ、そして秋山総合コーチの3人体制を敷いたとみて良いだろう。
王さんは、言わずもがな、868HR、2786安打、自らを職人と形容する打撃の探求者。役割が何であれ、バッティングケージの後ろに立ってしまった日にゃ、教えずにはいられない。
自身も2038安打を誇る新井打撃コーチは、指導者としてもイチローや川崎宗則の才能を開花させ、村松を再生させた。
この新井打撃コーチが、左打者、アベレージバッターの担当で、秋山幸二が右の長距離砲担当の打撃コーチ兼任という図式が見てとれる。
「技」を教えるのが新井打撃コーチなら、より遠くへ飛ばす「力」を教えるのが秋山コーチ、といったところだ。
そして、ヘッドコーチ的存在として機能させるために、投手部門へのコントロールにも配慮し、2軍から高山投手コーチを昇格させた。高山は秋山の西武時代の同僚、年が同じこともあり非常に親しく、昨オフ、四国独立リーグで投手コーチをしていた高山を、秋山自ら引っ張ったという、秋山のカバー範囲の穴を埋める懐刀ともいえる。
そして、球団はそこまで意図していないと思うが、松中信彦にも良い影響を与えるのではないかと思っている。
信彦の、グアムでの自主トレメニューは秋山から継承したもの。秋山の自主トレに参加し、その豊富なメニューについて行けずにゲロっていた信彦が、そのメニューを継承し、今は若手にそれをやらせる立場に立っている。
その師とも言える秋山がベンチにいるだけで、有形無形の良い影響を信彦に与えてくれるのではないかと、期待してしまう。
1999.9.8。当時のHawksというチームには未体験の熾烈な優勝争いを繰り広げるなか、松坂大輔の顔面への死球により頬骨を骨折しても、試合中に搬送された病院からベンチに戻ってきた初代主将秋山は、王監督の「ベンチにいてくれ」との願いに、以降もベンチに入り続け、フェイスガードつきの特製ヘルメットを作ってスタメン復帰。
忘れもしない、9.25、優勝決定試合では、1番ライトで出場して先頭打者HRを放ち、下手をすると初優勝へのプレッシャーで堅くなりかねなかったチームに優勝への自信を与えた。
チーム初となった日本シリーズでも、初戦でいきなり先制HRを放ち、第2戦でも先頭打者HR。敵地の初戦となる第3戦では、フェンスにスパイクを引っかけてよじ登る、伝説の「三角跳び」スーパーキャッチ!
初のリーグ優勝、日本シリーズと、チームの未体験の戦いのなか、名実共にチームの牽引役として、歴代最高齢記録である「37歳での日本シリーズMVP」を獲得。優勝を知らない万年Bクラスのチームにあって、優勝争いのプレッシャー、日本シリーズのプレッシャーを、1番打者としてこともなくクリアしていった秋山の貢献は図りしれない。
そして、その秋山の豊富な練習量、その背中を見て、小久保、松中、井口、城島らの球界を代表するスラッガーが育つ。
今のHawksの主力選手に脈々と受け継がれる球界随一の練習量の源流は、間違いなく秋山幸二だ。
その秋山幸二が、来季はベンチにいる。
球団の期待するところ以上に、そこに大きな期待を抱かずにはいられない。
ベンチに親父、王貞治がいる。そして、1塁コーチャーにチームの兄貴分、秋山幸二。現場には、長男坊小久保がいて、次男坊信彦や、小久保を慕う和巳がいる。
ほら、考えただけでも、幸福なチームがそこにある。
来季への期待を抱かずにはいられない。
- 事務局に通報しました。
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