その2 書評 巨人軍は非情か
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DIME
2009年01月20日 23:49 visibility231
さて、その2です。ちょっと遅くなっちゃいました、すみません。
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主題は変わりません、「自己主張」です。今日は2つ目として、この本の中で出てきているマスコミに対する「真摯な」批判姿勢を紹介したいと思います。
前回と違うのは、前回の自己主張、プロ野球の将来のあり方などについては、あくまで「考え方の一つ」であり正解が複数あるものですけど、今回主張しているところは明らかに不当なものに対する正当な批判、これまで本来ならばなくてはならなかったものです。
元々は清武氏も報道の人マスコミに属する人なのですから、そのような立場の人が批判するのは大変難しいだろうことが察せられますけれど、それでも尚、必要な批判を躊躇しない姿勢は非情に素晴らしいものだと思います。
今回の内容については、どうしても書籍の内容について引用せざるをえません。ただ全部引用するわけにもいきません。その点はご容赦いただけると幸いです。
さて、具体的にどのような内容があったかというと、
1,仁志敏久の移籍に際しての報道に対する批判
2,夕刊紙の無責任な中小記事に対する批判
3,クルーンに対する安直で一面的な筋立てに対する批判
などがありました。それぞれみていきたいと思います。
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1,仁志敏久の移籍に際しての報道に対する批判
(一部引用)
日本球界には未だにトレードをタブー視する傾向が強い。ベテランや功労者を移籍させれば、「冷酷」だの、「選手を大事にしない」だの、まともな取材をしない運動記者たちが悪罵を投げつける。
仁志に別れを告げてから二日後、産経新聞や朝日新聞におきまりの批判記事が掲載された。産経はこうだ。
「(記事内容の引用があるが省略、本で見てください)」
プロの選手は出場機会、生きる舞台を何よりも求めている、ということをこれらの記者は知らない。つっこんだ取材をしようともしない。キャンプから遠征まで同じ釜の飯を食い、その背中を見つめていた自軍の選手達だ。かわいくないわけがない。
(引用終わり)
「まともな取材をしない」、「おきまりの批判記事」、「つっこんだ取材をしようともしない」、このような明確な言葉が必要なんです。
そんなことはわかっている、わざわざ批判するだなんて大人げない、なんて言う人もいますが、「大人げない」からと明確に否定してこなかった結果として、「大人の判断」ができるはずの世間が正しい判断ができず、謂われのない記事が幅をきかせてしまって嘘が嘘を読んでいる今の巨人の環境があります。
今の「大人」の足りていない世間を正常に戻すには、子供扱いしているようですが、このような明確で正確な批判が必要です。できることならそんなことはない方が良いには決まっているんですが。
2,夕刊紙の無責任な中傷記事に対する批判
ちょっと引用が長くなってしまうんですけれど。これは是非周知徹底しておくべき内容なのでご容赦ください。
(一部引用)
発端は、夕刊フジの八月十九日付の中傷記事である。記事は、「連敗ストップでもYG分裂火種」「原は二枚舌」「上原チーム批判」などの見出しで、一ページを丸々使って、「原巨人が内部分裂の危機にひんしている」と批判している。
わが広報部長は署名記事を書いた記者に、
「ひどく悪意に満ちた記事ではないか。監督のどこが二枚舌なのか?」などと抗議した。すると、記者がこう反論した。
「『原は二枚舌』なんて書いてませんよ」
「ちゃんと見出しにもなっているじゃないか」と広報部長。
「きのう(新聞発行日)は紙面を見ていません。きょう買おうと思っていたんです」
「だって、きのう発売の新聞は、きょう売ってないでしょう」
「いや、土曜日の夕刊は日曜日にも売っていることがあるので。でも売っていなかった」
広報部長があきれ果てるのも無理はない。マスコミ業界で言う「書き飛ばし」「やっつけ記事」の典型で、私はこの種の中傷記事にはすっかりなれてしまっていた。
多くのスポーツ記者達には裏取りをするという習慣がない。誰かが言ったことを、本当なのかどうか確認しないまま、平気で書いたり言ったりする。
「スポーツなんだから、興業の世界なんだから目くじらを立てるなよ」という思い上がりがそこにある。しかし、自分が書いた原稿が同紙面化されたのか、自社の新聞すら読まない記者がおり、それを許す編集部がいるとは思わなかった。
(引用終わり)
これも同じく。もっと「大人」が増えて欲しいものです。なぜだか巨人のことだけに限っては、正常な判断ができなくなる人が多すぎる。
記事の内容に関する実態、書いてる内容に対するあまりの無責任さ。こういう否定は本来ならこのような記事があったときには毎回にでもすべき事だと思います。
徹底的なまでにそれらの記事があまりにも嘘八百を並び立てるだけの時間を割くにも値しないものなのだと世間一般に認知させなければいけません。特にネット上ではソースが夕刊紙レベルであるということに言及されないまま話が好き勝手に広がっている例が見受けられます。
それにしてもこのような無責任な記事を見て喜ぶ人は本当に可哀想としか言いようがないですね。そこまでして自分の思いこんだ歪んだ世界のなかで踊りたいのでしょうかね、滑稽にすぎますよ。
3,クルーンに対する安直で一面的な筋立てに対する批判
(一部引用)
クルーンはストライクと主張して激高し、敗戦直後に退場処分を受けた。スポーツ記者は「クルーン大暴れ」と騒ぎ、ある新聞は「上半身裸のままバスへ」という見出しを立てて、こう書いた。
「(記事内容の引用があるが省略、本で見てください)」
私は翌朝、新聞を読んでいて、クルーンが気の毒でならなかった。特にスポーツ新聞は善玉と悪玉を際だたせて書く。その方が書きやすく、安直な読み物に仕立てやすいからである。この日のクルーンは、変人でどうしようもない乱暴者という筋立てだろう。
しかし、実像は少し異なっている。
クルーンは前々日の阪神戦でセーブを挙げた際、フォークを投じて中指の爪をはがしていた。帰りのバスに乗り込んだ瞬間、彼は監督、コーチ、同僚の選手らに
「スイマセーン」
と一言、大声で謝罪をした。
私はバスの前列二番目の定積でそれを聞き、宿舎に帰着した。遠征先のホテルの玄関口にはファンが待ち受けていた。すると、バスを降りたクルーンは前日同様にサインを始めた。サインを貰った人は二十人はいただろう。惨めな夜にも丁寧にファンに答える選手の姿を私は見たことがなかった。
(中略)
甲子園球場の左翼席から毎日、練習中の投手陣にかなりのやじが飛んでいた。ほとんどの選手は相手にせずに練習をしていたが、クルーンは阪神ファンと掛け合いを見せ、、最後はメガホンや帽子にサインをして返していた。
(引用終わり)
これは前2つとは若干違います。
事実ってのはより多面的であるって言うこと。そしてマスコミの報道は自分たちの都合(より耳目を集める)のためだけに一面的な捉え方をしがちであると言うこと。
それに惑わされないためには、情報を受け取る側が、それを認識しなければいけないっていうこと。いわゆるメディアリテラシーですね、その必要性を示している一例だと言えるでしょう。
「安直な読み物に仕立てやすいから」と一刀両断している姿勢には素直に好感が持てます、本来マスコミに属するはずの人がここまで言って良いのかって思うぐらいです。スポーツ新聞はって言っていますけど、今のマスコミ、テレビとか一般紙とかも五十歩百歩ですし、ある意味自己批判に私には見えます。最近のテレビは本当に酷いですよねえ、政治関連のニュースなんてどこまで正気でどこからコントなのかわからなくなってくる。
個人的には惨めな夜にも、サインを要求するファンの姿を私は見たことが・・・あるなぁたくさん、2軍で。同じファンとして恥ずかしいですよねえ。
なんであんなにサインとかほしがるんでしょうね、私には理解できません。メモラビリアっていうんでしたっけ、まったく興味がないので。
だって自分が行ったその要求に選手が時間を取られた分、練習時間が減ったり休養時間が減ったりするのかもしれない、試合で残してくれる結果に影響するかもしれないと思うと、そんな怖いこと私にはできませんよ。
選手の時間はできうる限り、より優れた選手になるために使って欲しいです。選手個人のプライベートはちゃんと尊重した上でね。だからファン対応って言うのは「プロ野球選手」としての仕事の範疇の時間であり、その時間をそんなことに使わせたくはない。
もちろんこれはファンとしての認識です。選手本人がそのような意識でファンサービスを行わないというのは間違っていると思います。
私が言いたいのはファンの側、ファン側としてそのような自分のワガママ(としか私には思えません)を自制するという感覚はないのかなと疑問を感じます。
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一番素晴らしい文章を紹介するのを忘れていました。最後にその一文をひいておきたいとおもいます。
集団の勝ち負けの原因をもっぱら選手個人の能力や汗、根性に求める人や新聞記事を私は信じない。
この一文だけを抜き出してしまうと誤解を招きかねないので是非まわりも併せて読んで欲しいのだけれど、それでもこの一文は白眉。
繰り返すが、同じ領域に属しているはずの人でありながらこう言い切れてしまえる事は素晴らしく、尊敬に値します。
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- 事務局に通報しました。
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