【巨人】 ディロンとアリアス。 アリアス編。

  • DIME
    2006年11月04日 22:28 visibility2186

次にアリアスに関してですが、彼に関しても成績が伴わなかった事を理由にして「巨人はアリアスを取る必要がなかった、1年で解雇するなら取るな」という批判をする人がいますが、これは的外れの批判です。

まず成績が伴うかどうかはスカウトによる選手能力の見極めの問題です。それに対してシーズン中の選手追加獲得に関してはその時点でのチーム編成の問題です。

 

その時点で足りないポジションがあるのであればそこは埋めなければなりません。シーズン中に足りないポジションがありそれを編成内で埋めることが難しいのであれば、編成外から獲得する。これは編成としてただしい活動です。

これを混同して獲得選手の成績が伴わないときに獲得活動そのものを否定するのは明らかに間違っています。批判すべきは選手評価・スカウティングの部分です。

 

現在の巨人の周囲ではFAにて獲得した選手が活躍しないことに対して、選手能力の見極めの不足でなくFA獲得そのものを否定するような論調がありますが、これも上記と同様に飛躍した論理によるものだといえるでしょう。

もちろん「チーム編成から考えてもあのタイミングでアリアス(普遍的に言えば外国人)を取る必要がなかったのだ」という批判ならば考慮するに値するでしょう。ただ私はそういう批判に関しては単純に間違っていると思います。その説明のために、何故アリアスを獲得したかというのを時系列に沿って振り返ってみたいと思います。


まずアリアスとの契約は6/28、来日は7/3でした。1軍初出場は7/5、最終出場は7/30となっています。
出場試合数は全17試合、先発のみです。打順は66666/66555/55555/57を任されていました。守備位置は最初の2試合のみレフト、以降15試合はサードでの起用でした。
ここから巨人側がアリアスに対して打線の中では5〜6番の中軸、守備位置はサードの役割を期待され、任せていたことがわかります。
チーム編成から考えて必要だったかどうかということを考えるにはこの中軸&サードという役割が編成上アリアス以外でカバーできたか?ということになります。

 

その前後のチームの状況を振り返っていきます。5/18にディロンが腰痛で抹消、5/29に高橋由伸が怪我、6/2に小久保裕紀選手が怪我、6/12に矢野謙次と怪我人が集中して発生しベストメンバーを組めなくなりました。これにより、中軸&サードという役割に欠損が生じたことになります。

 

まずサードというポジションですが、この時点で満足な状態にあった内野手の中からサードできないのが吉川。1軍内で別ポジションを担っていたのが小坂、二岡、仁志、李。再調整が川中、黒田。2軍でも結果を残していなかったのが長田、十川孝、大須賀。
彼らを除外しても岩舘学、古城茂幸、脇谷亮太が存在していましたのでサードという役割に関しては編成上でカバーは可能だったといえます。っていうかさすがにポジションがカバーできなきゃ試合放棄するしかないのでプロ球団として不可能になるはずがないのですが(笑)

 

次に打線の方ですが、巨人の月間の1試合平均得点は3〜4月が5.27点、5月が4.42点に対して、6月に3.00点と急降下することになります。
詳しく打順別にみてみたいところですが、ちょっとデータ収集に時間がかかるので暫定的にその打順を担うことの多かった選手について見てみます。
この時期3・4番を担った二岡智宏・李承ヨプが5月の月間28打点に対して6月が31打点と変わらず、その後の5〜7番を担うことが多かった高橋由伸・小久保裕紀・阿部慎之助のそれが5月31打点に対して(離脱もあって)6月11打点となっています。つまりこの得点能力の低下は、主として高橋由伸・小久保裕紀の離脱に伴う5〜7番(と予想される)の得点能力低下だといえます。
総合して考えると5〜7番を担える選手が6月時点での編成では確保できなかったため得点能力が低下していたことが読み取れます。つまりこちらは編成上でカバーは不可能だったということです。

 

ちなみに、怪我人が出ただけでこうも得点能力が低下したのはそこまで想定していなかったチームの先見性のなさであるという指摘をする人もいましたが、これはプロ野球の人数制限を想定していない考えです。
球団には支配下登録枠70名という制限があり、この中で内野手は16名前後の枠でやりくりをしなければなりません。つまり人的リスクに関しては人数制限の限り以上のモノまでは防ぐことが出来ません。簡単に言えば、足りないかもしれないからもっと多く選手を用意しておけ、と言うわけにはいかないってことです。

サードに限って考えても、その中でレギュラーに小久保、控えにディロンを置き、レギュラー内コンバートで二岡を用意し、抜擢する選手として川中、黒田、古城、最後の砦に若手の岩舘と脇谷を用意しておくというのは「人数制限の範囲内では」十分善後策を講じているといえます。
小久保裕紀の怪我はあくまで「最後の鍵」となっただけであり、この得点能力低下はディロン・小久保の怪我、仁志敏久・小坂誠の不調(どちらかが調子がよければ二岡をサードに回せた)、川中、黒田の不調と6名のタイミングが重なったためにこれは起きたと考えられます。16枠中6名という数字は「人数制限の範囲内では」防げるリスクを超過していると考える方が妥当でしょう。
もちろんこの枠内の選手そのものの能力が低すぎたんだって考えることも出来るんですが、この中で今年解雇された黒田がすぐに西武から手が挙がった事を考えると巨人内野手陣の能力が低いという指摘も考えにくい。またそもそも少なくとも怪我人の想定をしていないという話ではなくなっていて単なる論理の挿げ替えでもあります。

 

話を戻しますと、上記で今年の巨人がそうなったようにこの70名制限内で防げる人的リスクは意外なほど低いので「それ以上」に備えて球団側が行うリスクヘッジがあります。それが枠をあけておいてシーズン中に選手を追加することでリスクをつぶしにかかるという方法です。これを巨人は正当に行使したといえます。使わないぐらいなら枠をあけたりせずにその分選手を加えていた方がいいわけですから。

 

以上より6月時点での状況はサードの獲得の必然性は高くなかったけれど「チーム編成の外から5〜7番を担える野手を追加で獲得すべき」であったと言えます。
またこの時ポジションはサードであることが望ましいです。例えばファーストを取ったとしてもそこには李承ヨプが存在しているわけでチーム強化につながりません。ポジションは出来るだけ空いてるところが望ましく、当然一番空いてるのはサードなわけですからサードであった方がムダがありません。

 

獲得方法については、日本ではシーズン途中の移籍はあまり盛んではなく、トレードでそれを担える野手を獲得するのは難しく、また足元を見られがちです。
もちろん外国人であっても足元を見られる(=金がかかる)のはかわらないのですが、有望若手の放出とかがないだけ国内トレードよりマシですからこういう場合は外国人でのカバーが最善の選択肢といえるでしょう。

 

以上から、「チーム編成の外から5〜7番を担える外国人野手(できればサード)を追加で獲得する」のは正しい編成の判断だったと言えると私は思います。
もちろんこの場合は獲得理由からして短期的な穴埋めですから、今年どころかシーズン途中でその穴が修復されれば必要なくなるものであるわけで1年で契約を満了するのは当たり前。むしろそのつもりで取った選手が予想以上に活躍したから続けて契約しました、なんて事の方が行き当たりばったりで結果はともかくとしてあまり望ましい編成活動とはいえません。


問題はその意図で獲得したアリアスが想定どおりの活躍ができなかったということであり、もちろんこれに関してはスカウトが反省すべきところですが、シーズン中の緊急獲得であり外国人選手にとって「日本の野球に対応できるかどうか」というのが大きなリスクの1つであることを考えると日本での活動経験があり今年のメキシカンリーグでも一定以上の成績だったアリアスという選択肢を選んだのは決して間違っているとも思いませんが。
もともとシーズン中の補強なんて率の悪いギャンブルですから、失敗したら全て悪い選択だったとか言い出してしまえば何にも出来なくなってしまいます。ただ率が悪くても0じゃない以上その選択肢を行使するのは球団として当然のことです。最悪なのは率が低いからとその行使さえも認めない(=金を出さない)球団ですから。
どうもその率の悪さからなのか、そういう金を出さない=やれるだけのことをやろうとしない球団やその選択を結果論的に賞賛する傾向のある日本プロ野球界とファンには非常に懸念を感じます。なんで日本人ってそんなに金を出すことを悪く言うのか理解に苦しみます。


アリアスの件で調べている中で面白いものも見つかったのですが、いつものように文章が冗長なもので長くなってしまいましたので別建てで書きます。

 

 

 

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