背番号55の呪縛から解放された大田の心機一転

  • 舎人
    2013年11月30日 05:50 visibility1846
以前から噂になっていた大田の背番号が変更となり、55番からこのたび44になりました。これは変更というより剥奪といった方が正しい感じで、大田の実力が“元の持ち主”松井秀喜に及ばなかったからに他なりません。どうやら55番は空き番になるようですが、これは来春キャンプで臨時コーチを務める松井氏へのラブコールのような意味合いもあるからなのでしょう。世間の多くは松井氏のことを日本人みんなのもので、巨人出身というドメスティックな存在ではないと思っているように感じます。そして、それを松井氏自身も自任しているような気がします。そのことをどうも読売グループだけは受け入れたくないようで、長嶋さんに代わるカリスマとして繋ぎ止めようとしているよう私には思えます。それ自体いけないことだとは思いませんが、背番号とは切り離して欲しいと思いました。大田がダメなら55番は辻にでも、ドラフト2位指名された和田君でもいいからくれてあげればいいのにと思った次第です。もっとも背番号18を杉内に与えたことに始まり、2番や8番や17番といった意味のあるナンバーを移籍予定の選手たちにどんどん与えるフロントは、それを戦略的カードとして考えているのでしょう。

さて、大田は期待を込められて背番号55を送られた訳ですが、ことあるごとに松井氏と比較され、どうやらウンザリしていたのではないかと思います。自分は精一杯プレーしているというのに、背番号55に相応しくないと言われ続ける。そのことがいつか呪縛となってしまった感じでした。打席の中で大田が追い込まれると、他球団のファンは背番号のことを揶揄してヤジを飛ばし動揺させようとします。それが時として見事にハマり大きな空振り三振をすると心ない人たちは拍手をしたりする。中にはきちんとしたエールとして背番号に相応しい活躍をして欲しいと言う歓声を上げるファンもいたのでしょうが、大田にはプレッシャーになっていたのかもしれません。いけないことですが大田は背番号のことでヤジるファンにキレて言い返していたこともあります。「オレはオレ、松井さんは松井さん、いい加減にくれ!」そんな思いが聞こえてくるようでした。

大田観客の野次にキレる!(動画あり 2011年7月10日 日記)

このように背番号のことを言われ続けてきた大田でしたが、今年の春先に松井氏の国民栄誉賞の話が出ると、背番号55の現在の持ち主ということで、改めてよく引き合いに出されていました。するとその雑音を振り払うかのように、「これは僕の番号ですよ」「僕は僕ですから。これからも自分がやるべきことを精一杯やるだけですよ」などと周りに言い放ったとか。

“永久欠番案”にG大田「55は僕の番号」(東スポWeb 2013年04月06日)
巨人の「55番」に再び熱い視線が注がれている。政府は、巨人・長嶋茂雄終身名誉監督(77)と、巨人やヤンキースなどで活躍し昨季限りで現役引退した松井秀喜氏(38)に、国民栄誉賞を授与を発表したが、一方、チームでは、松井氏がつけていた背番号55の行方が再注目されている。異論はあるが、長嶋氏と同時受賞で、肩を並べたことになり、球団では「長嶋さんの『3』同様、松井の『55』も永久欠番にすべきだ」という声が上がっているのだ。
 だがそうなると、松井氏から「55」を継承した大田泰示外野手(22)はどうなるのか。本紙は大田を直撃。松井氏の国民栄誉賞受賞について感想を聞くと「すごい人だとは重々分かっていますが、すごいとしか言いようがありません」と答えた。
 背中の55番もますます重みを増したはずだ。そう聞くと、大田は右手でユニホームに縫い付けられた胸の55番をつまんで見せながら「これは僕の番号ですよ」と毅然として言い切った。そして「僕は僕ですから。これからも自分がやるべきことを精一杯やるだけですよ」と力強く続けた。
 この頼もしい反応は、先輩ナインにも「泰示、よく言ったじゃないか」と好感をもって受け止められた。しかし昨季までの4年間で、一軍出場はわずか38試合。原監督から1番候補に指名された今季も、開幕スタメンは勝ち取れなかった。
 球団関係者は「5月5日の松井引退セレモニーは、長嶋さんの『3』と『55』を強調したものになる。当然、永久欠番化も検討されることになるだろう。泰示の『55』? それは“今季限り”じゃないか」と話す。
 そんな周囲の厳しい声をはねのけ、大田は“ゴジラの後継者”と認めさせるような活躍を見せられるか。今までのような姿で終わるようなら“55番剥奪”が、いよいよ現実味を帯びてくる。

少し開き直りにも似た印象を受ける話ですが、察するに、この背番号のことを後ろ向きに考えてはいけないという決意のようなものが感じられます。その意味で今シーズンは心に期すものがあったのだろうと思います。しかし、それが中途半端なものに終わってしまったということで、大田にはある程度の覚悟があったのかもしれません。

昨日、大田は契約更改に臨み300万円ダウンの1200万円でサインをしました。その席で背番号変更について聞かれると、「5年間、55番としていろいろな経験の中で人間を成長させてもらった。気持ちを新たにやっていく。来年は笑顔でこの会見に出られたら」(デイリースポーツ)や「今までは55番は松井さん、そのようにならないといけないと、勝手な考えで空回りしたりしていました。44番になって、プレーで注目されるよう頑張ります」(日刊スポーツ)といった受け答えをしています。この人間として成長させてもらったとは実感ではないかと思います。常に偉大だった松井秀喜と比較されたり、試合のたびにあれだけ散々野次を飛ばされてきたのです。きっと艱難は汝を玉にしてくれたことでしょう。今回の背番号変更は大田にとって寂しくもあり、憑き物がとれたような晴れ晴れとした思いもあり、複雑なものだったと思います。背番号に人は殊更意味を求めますが、これに実体がある訳ではありません。大田はどの背番号になってもそのことに囚われることなく、自分の道を見つけて行って欲しいと思います。以前の日記でも書きましたが、大田の最大の問題点は技術的なことではなく、見るたびにころころと取組んでいることが違っていることに象徴されている主体性の無さではないかと思います。自分というものをしっかりと確立して行って欲しいです。背番号のことで右往左往していては、技術以前に大成できません。

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