
宮國の一軍復帰前と復帰後の投球内容比較 宮國の球速の話
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舎人
2012年07月21日 08:09 visibility1860
しばらく球場へ行くこともないので、この間にやり残していることをできるだけやっておこうと思います。まずは先週の15日の宮國の一軍復帰登板を振り返ってみます。その前に右肩の違和感で一回で降板になった5月のオリックス戦はどんな投球だったか?
平成24年5月16日 対オリックス戦
一回表
坂口:カウント1-2からファーストファールフライ(138キロS、121キロS、135キロF、125キロB、真ん中120キロ)
大引:空振り三球三振(129キロS、97キロS、外角118キロ)
後藤:フルカウントからライトフライ(123キロS、129キロB、134キロB、119キロS、131キロB、内角低め102キロ)
三者凡退、一回表終了
登板結果
先発1イニング 球数14球 奪三振1 被安打0 無四球無失点 MAX138キロ
この試合は三者凡退で投げ終えたものの、オリックスの関係者は「宮國って投手はこんなに球が遅かったのか」と、別の意味でビックリしていたそうです。確かにMAX138キロはいくら何でも遅過ぎます。しかも、投げるたびにどんどん球速が落ちて行く感じです。するとこんな記事まで出たのでした。この試合に限らず、今年の宮國は昨年よりも球速が出ていなかったというのです。
[巨人]原監督ショック!秘蔵っ子宮国予想されたアクシデント
[セ・パ交流戦大波乱の予感] (日刊ゲンダイ 2012/5/17)
腕をグルグル 球速10キロダウン懸念していたことが現実のものとなった。
原監督は交流戦の開幕投手に宮国を指名。高卒2年目右腕は初回を14球で難なく3者凡退に打ち取った。その裏、5点の大量援護をもらったものの、打順が回ってくると代打を出されて緊急降板。その後球団から、「右肩の違和感のため」と発表があった。確かにマウンド上で盛んに腕をグルグル回していた。
宮国は原監督がキャンプで一軍に抜擢すると開幕ローテの座をもぎ取り、ここまで2勝0敗、防御率1・34の好成績。「巨人の宝」ともいえる将来のエース候補だ。前日も原監督は「連敗中だった甲子園(4月8日)でチームの危機を救った(初勝利)というところで非常に評価が高い。5連敗中だった?特に心の部分で臆するような投球をしない。心技体を持ち合わせている」とベタ褒めしたばかりだった。185センチ、76キロ。誰もが認める潜在能力と強心臓の一方で、カラダは細く、故障が心配されていた。昨年は二軍戦でもわずか4試合の登板。宮国を大事に育成していた当時の小谷二軍投手コーチは「慎重に育てるべき」と秋の一軍昇格指令を拒否したほどだった。
最近、二軍関係者の間で宮国の球速が話題になっていたという。
「去年のイースタンの試合では140キロ台半ばだった直球が、今年は130キロ台半ばがほとんど。10キロも遅い。一軍に抜擢されて制球を気にして抑え気味に投げているのか、もしかしたら、肩やひじに痛みや違和感があるのに我慢して投げているのではないか。宮国は大丈夫か? って、みんな心配しているんです」(某選手)
1日の広島戦でプロ初完封を挙げた宮国に、川口投手総合コーチが「ベテランのような投球。もっとスピードアップしないと」と酷評したことがあった。この日の最速は138キロだった。
首脳陣の間でも、宮国の疲労を懸念する声が上がっていた。それでも原監督はこの秘蔵っ子を手元に置くことにこだわった。20歳の右腕も期待に応え続けてきたが、細い体がついに悲鳴を上げた。原監督は宮国について「少し肩に……というところがあったので、無理はさせまいと。今日は大事を取ってということ。登録抹消? いやいや、大丈夫だと思う。ブルペンでは全然平気だったんだよ。大したことはないと思うが。(腕をグルグル回したり)いつもないしぐさをしていたからね」といった。このアクシデント、大きなショックに違いない。
確かに昨年のジャイアンツ球場で見た時はMAXで147キロ、ストレートの平均が141〜142キロといった感じでした。しかし、遅いと感じたことはあったとしても、いくらなんでも、そんな10キロも落ちたなどという印象はありません。そこで、過去の登板結果を調べてみると、この故障離脱の一週間前の宇都宮で行われたDeNA戦では自己最速タイのMAX147キロを記録しているのです。さらに遡って、記録として残っている昨年と今年の宮國の投球結果を並べてみました。
2011年
平成23年6月5日 対JR東日本戦 プロ初登板 ジャイアンツ球場
2イニング 球数17球 奪三振2 被安打3 四死球0 失点0 MAX144キロ(2度)
平成23年6月12日 対WIN94戦 ジャイアンツ球場
2イニング 球数38球 奪三振1 被安打3 四死球2 失点0 MAX147キロ
平成23年6月26日 対所沢グリーンベースボールクラブ戦 ジャイアンツ球場
3イニング 球数39球 奪三振0 被安打0 四死球2 失点0 MAX145キロ
平成23年6月26日 対フェデックス戦 ジャイアンツ球場
3イニング 球数31球 奪三振2 被安打3 四死球0 失点(自責点)1 MAX144キロ
平成23年8月11日 対ロッテ戦 二軍初登板 東京ドーム
3イニング 球数31球 奪三振2 被安打1 四死球0 失点0 MAX142キロ
2012年
平成24年2月19日 対阪神戦 沖縄セルラー那覇
3イニング 球数28球 奪三振4 被安打0 与四球0 MAX139キロ
平成24年2月27日 対韓国SK戦 沖縄セルラー那覇
2イニング 球数29球 奪三振3 被安打1 与四球1 MAX138キロ
平成24年3月25日 対アスレチックス戦 東京ドーム
5イニング 球数90球 奪三振9 被安打3 与四球2 MAX143キロ
平成24年4月1日 対日本ハム戦(二軍) ジャイアンツ球場
2イニング 球数101球 奪三振1 被安打6 与四球2 失点(自責点)2 MAX145キロ(3度)
平成24年4月8日 対阪神戦 プロ初登板初勝利! 甲子園球場
7イニング 球数97球 奪三振4 被安打3 与四球3 失点(自責点)1 MAX146キロ
平成24年5月1日 対広島戦 プロ初完封! 東京ドーム
9イニング 球数104球 奪三振7 被安打3 与死球1 失点0 MAX144キロ
平成24年5月8日 対DeNA戦 宇都宮清原球場
5.2イニング 球数90球 奪三振5 被安打9 与死球0 失点3 自責点2 MAX147キロ
こうしてみると、今シーズンのキャンプ中は140キロに届いていません。しかし、普通の投手はここからシーズンインに向けてどんどん球速を上げていくものです。それと、沖縄セルラー那覇という球場のスピードガンの辛さも原因としてあるかもしれません。その通り、宮國は3月の末になるときっちりと昨年同様の球速表示を上げているのです。昨年もそこまで球威のある投球をしていた訳ではなかったのですし、今年もそこまで球威不足の投球をしていた訳ではなかったのです。
ただ、疲れから宮國の投球フォームにぐらつきが出ていたのは確かで、4月の一軍初勝利の後当りから、徐々に不調の兆候は現れていたことは間違いないと思います。そのことが宮國の投球が昨年よりも不安定で、球速も出ていないという話につながってしまったのではないでしょうか。川口投手の「ベテランのような投球。もっとスピードアップしないと」というのは、昨年に比べてということではなくて、一般論として二十歳の若手投手のあるべき姿を説いたのでしょう。
川口コーチは故障をした後の一軍復帰の条件として球威が戻ることを挙げていましたが、復帰へ向けたファームの試合では、その要望に十分過ぎるほど応える形で、素晴らしい球速表示を叩き出していました。何度か話してきた通り、別人のような投手になって宮國は帰って来たのです。そして、3試合ほどファームで結果を残し、いよいよ一軍復帰登板となったのでした。
平成24年7月15日 対中日戦 名古屋ドーム
一回裏
大島:初球ファーストゴロ(外角142キロ)
井端:カウント0-1からセンター前ヒット(146キロS、外角126キロスライダー)
和田:カウント2-2からライト前ヒット(???キロS、140キロB、125キロS、133キロF、129キロB、105キロF、真ん中144キロ)
一死一二塁
山崎:カウント1-0からライト前ヒット(134キロB、外角143キロ)→井端が本塁に突入するも長野本塁補殺!
二死一三塁
谷繁の打席でバッテリーエラー→山崎がセカンド進塁
二死二三塁
谷繁:ストレートの四球(133キロB、135キロB、130キロB、アウトロー129キロ)
二死満塁
平田の打席で宮國がボーク(映像を見る限りボークには見えないが)、和田が生還、0対1、中日先制
二死二三塁
平田:フルカウントから空振り三振(127キロS、148キロB、107キロF、135キロB、127キロFボーク、145キロB、低め128キロ)
二者残塁、一回裏終了
二回裏
高橋:カウント1-2から空振り三振(147キロB、128キロSw、125キロS、低めワンバウンド103キロ)
堂上直:カウント2-2からショートゴロ(129キロSw、147キロS、136キロB、127キロB、外角148キロ)
吉見:カウント0-1からショートゴロ(146キロS、低め126キロ)
三者凡退、二回裏終了
長野のセカンドゴロで1対1の同点に追いつく
三回裏
大島:カウント1-0からセカンドゴロ(126キロB、外角146キロ)
井端:カウント1-2からライト前ヒット(147キロF、109キロB、109キロSw、外角105キロ)
和田:フルカウントからセンターフライ(140キロS、134キロB、108キロB、125キロF、125キロB、外角127キロ、松本のスーパープレー!)
山崎:カウント1-0からショートゴロ(105キロB、外角146キロ)
井端残塁、三回裏終了
四回裏
谷繁:カウント2-2から空振り三振(123キロB、125キロS、144キロF、142キロF、133キロB、インハイ140キロ)
平田:カウント2-1からショートゴロ(145キロB、127キロSw、143キロB、外角142キロ)
高橋周:カウント1-1からセンター前ヒット(141キロB、124キロS、真ん中105キロ)
堂上直:フルカウントから空振り三振(144キロB、125キロB、125キロS、122キロB、143キロS、外角124キロ)
高橋周残塁、四回終了
五回裏
吉見:カウント2-2から見逃し三振(???キロB、138キロB、103キロS、139キロS、136キロF、真ん中121キロ)
大島:カウント0-2からワンバウンドしてかするような死球(125キロS、143キロSw、低めワンバウンド134キロ)
井端:カウント0-1からセンター前ヒット(121キロS、低め139キロ)
一死一二塁
和田:カウント3-1からセカンドフライ(139キロB、143キロS、140キロB、124キロB、外角125キロ)
山崎:カウント1-0からレフト線勝ち越しタイムリー二塁打(142キロB、外角105キロ)、1対3、中日勝ち越し
→送球の間に山崎はサードへ
二死三塁
谷繁:カウント2-2からショートゴロ(127キロF、143キロF、147キロB、145キロB、128キロF、低め146キロ)
山崎残塁、五回終了
1対3のまま試合終了、初の負け投手
登板結果
先発5イニング 球数90球 奪三振5 被安打7 死四球2 失点(自責点) MAX148キロ
2か月ぶりの一軍の登板だった訳ですが、球速はファームでの登板同様にかつてない数字を記録していました。しかし、初回二回は緊張で投球フォームが落ち着かず、十分ためが作れていなかった感じでした。そういったバタバタした投球をしている間にボークを取られ1失点。どこがボークなのか分からない感じでしたが、これは雰囲気がかもしだしたボークではなかったかと思います。
その後も復帰前のファームの試合と同様にカーブが浮いたり、スライダーが少しずれていたりして落ち着かない投球が垣間みられたものの、三回あたりから、徐々に投球フォームは落ち着いてきた感じでした。ファームで最後に投げた試合の時よりもストレートの制球は悪かった気がしましたが、変化球の制球は少し改善された気がしました。
ところが、宮國は五回に山崎に勝ち越しタイムリーを打たれてしまいます。どうもベテランに対する配球がまずい感じで、変化球を狙い打たれていた感じでした。少し暴れる球があったとしても、ベテランに対してはもう少しストレート中心に攻めればいいのではなかったかと思いました。
この試合は言ってみれば宮國にとってオープン戦のようなものだったでしょう。体力がアップして球威が上がったものの、細かい感覚がずれて制球が悪くなっているのだと思います。少しずつ登板を重ねることで徐々に感覚を取り戻していけばいいと思います。この中日戦での登板結果をベースに次回はきっと問題点を修正してくることを期待します。
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