
高橋由伸の巨人新監督就任と三軍制導入
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舎人
2015年10月27日 05:18 visibility1510
高橋由伸が原さんの跡を継いで新監督に就任しました。これは本来の流れから言ったらずいぶんおかしい気がします。広岡さんがポスト紙に「彼には監督をする資格は無い!」と指摘していましたが、当の高橋だってやりたくないし、周りのOBや識者も怪訝な思いでいる。長嶋さんがそうだったように、現役を引退して、何の下積みや修行もないままに監督をするということは大変なことだと思います。江川さんは以前、助監督の話が上がった時に、「こういった監督やコーチをやるということは、ある程度の助走が必要ですから・・」とやんわり否定していました。この助走とは非常に意味深な言葉ですが、要するに監督やコーチを引き受けるということは、それなりの準備や心得が必要だということを言いたかったのではないかと思います。今回の監督就任劇は、高橋にその「助走」を何もさせずにいきなりジャンプさせたようなものではないかと思います。本人にとってみれば、正に青天の霹靂といった感じではなかったか。しかも、問題なのは読売側が本人の承諾を得る前にこのことをマスコミに公表してしまったこと。いわゆる新聞辞令というものです。さらには就任要請を公のものとして、長嶋さんまで駆り出して大仰なものにしてしまった。高橋にしてみれば、もはや自分の意思とは無関係の所で話が進んでおり、身動きが取れない感覚を受けたのではないだろうか。これは奇しくも18年前のドラフト時のことに酷似しているという指摘もあります。高橋がヤクルトに行きたかったかどうかは分かりません。しかし、話が自分の知らない所で進んでいる違和感は感じていたように思う。だから、晴れやかな逆指名会見だというのに、寝不足のような、どこか感情を押し殺しているような発表会見だったのではないだろうか。今回の監督就任も同じように由伸は自分不在な場所で決められたことに振り回されてしまった。そんな由伸の気持ちを考えると、読売側の強引なやり方に嫌悪感を覚えます。
色々なメディアでも噂されているように、読売側が最も監督になって欲しいと思っていた人物は松井さんだったのでしょう。これはただ単にスーパースターを監督にする営業面のことだけではなくて、ポスト長嶋を何としても手に入れたいという読売側の思惑があると思う。つまり、読売はカリスマが欲しいのです。言わば「錦の御旗」です。長嶋さんは球界における天皇陛下のようなもの。そういった権威を手元に置いておきたい。そんな思惑があると私には思えます。しかし、当の松井さんは、そんな読売側の魂胆が見えており、一定の距離を置いている感じです。日本球界の一組織に過ぎない読売球団の私物ではなく、もっと広い世界の中の自分でいたい。そんな思いでいるのかもしれません。私自身は松井さんは巨人と決別した単なるOBの1人にしか過ぎないと思っていますし、本人が迷惑がっているようなことを止めて、もっと他の選手を大事に考えた方がいいと思っています。松井さんが巨人を出ていった理由の1つは、今の高橋の姿が見えていたからではないか。自分のアスリートとしての夢よりも、球団のしがらみに飲み込まれてしまうことが危惧したからではないか。松井さんが移籍後、折に触れて残してきた高橋たちのことを気にかけていたのは、自分が逃げてしまった「しがらみ」に後輩たちが不幸になることを心配してではなかったか。
私はおそらく原さんが今季限りで辞めることは既定路線だったのだと思う。そして、球団側は後任を川相ヘッドの昇格で良いと思っていたのではないかと思う。しかし、いざ監督を決める段になって、他の意見が出て来た。それが読売の治天の君たる渡邊最高顧問だったのかもしれないし、そうでなかったかもしれない。いずれにしても読売の求める「カリスマ」に足るべき人物として川相さんではとてもではないが相応しいと思えないとの判断があった。さらに営業面を考えると、早々簡単に地味な人物は選ぶべきではないとの思惑もあった。そこで消去法で選ばれたのが高橋だったのだと思う。ドラフトであんな地味な指名をしておきながら、監督にスター性を求めるなんて、何とも笑わせてくれる話です。もっとも、おそらくそれは巨人のフロントもそう思っていたのではないか。こんな理不尽を諾としなければいけない最も忸怩たる思いでいるのは巨人のフロントだったのではないか。しかし、そうだとしてもどこかからのどうにもならない圧力がかかるというのが、巨人が一向に健全化しない最大の原因のような気がします。
さて、そんな高橋の監督就任の話と相前後して、巨人に三軍制導入の話が浮上してきました。これはなんだか清武さんの始めた第二の2軍構想のような展開です。球団は以前から準備をして来たということですが、原さんがいなくなったということで、ようやく具体化させたのでしょう。こういった選手の大量保有及びふるい分け方式は、極めて客観性の高い運用が必要なんです。偏った主観の下で運営はできません。つまり原さんのような絶対君主がいては成り立たないということ。私は清武さんのファーム改革が失敗した最大の原因は、BOSに基づいた編成や選手の抜擢を原さんが理解してくれなかったことにあると思っています。今はどの球団もBOSを導入しているようですが、そんな中で以前のような全権監督なるものは障害になってくるのです。フロント主導によるシステムさえしっかりしていれば、栗山さんや工藤さんのような指導経験の乏しい監督としては素人然の人物だっていいのです。
私は常勝軍団だった80年代〜90年代初頭の西武が、90年代の中盤になるにつけ、徐々に輝きを失った原因とは、原巨人が辿ったのと同じものだったように感じています。BOSなんてなかった頃ですが、当時の西武には根本さんという凄腕のGM(管理部長)がいた。この根本さんが描いたグランドデザインの通りに西武というチームは強くなって行ったのです。確かに常軌を逸した選手獲得の動きがありました。しかし、きちんとした目的と方向性があったからこそ、先々を見据える編成がなされ、あれだけ長期間常勝でいられた。しかし、その西武に陰りが出てきたのが、根本さんと監督の森さんとの力関係の逆転です。連覇を成し遂げることで球団内の森さんの力は年々増して行きました。編成にも森監督の意見が強く反映されるようになります。そんな中で根本さんは西武球団見切りを付けて、ダイエー(現ソフトバンク)に移籍するのでした。巨人も契機となったのは日本一になった2009年だったように思います。それまではお互いを認め車の両輪のようになっていた原さんと清武さんが、徐々に上手く行かなくなります。かつての森さんのように原さんの意見が強くなるに付け、清武さんの理想は遠のいて行ったのでした。
私はこの三軍制導入に関してだけは由伸監督で良かったと思っています。そうでなくても自分に自信が無い状態の新人監督ですから、球団の用意したシステムに乗っかることは何の抵抗も無いでしょう。白紙な訳ですからむしろシステムを積極活用してくれるかもしれません。もしかしたら、球団も球団運営をもう一度自分たち主導のものにしたいがために、敢えて無垢な状態の新人監督を選んだようにも思えてきます。
いずれにしても、来シーズンどんな結果が出ようとも、各々がその結果を自分だけのものだと決めつけないで欲しいと思っています。高橋は仮に不甲斐無い結果だったとしても、それは自分だけのせいではないと思うべきだし、優勝したとしても、それは自分が神輿の上に乗ったからと謙虚でいて欲しい。フロントはフロントで、結果が出なくても、それを間違っても高橋だけのせいにしてはいけないし、優勝したとしても現場を立て黒子に徹して欲しい。そう願わずにいられません。
何はともあれ、監督になってしまったからにはファンとして由伸を応援したいといけません。私にとっては第一次長嶋監督時代に巨人ファンになって、これでのべ9人目のジャイアンツの監督です。今を輝くソフトバックを越える常勝軍団になってくれることを期待しましょう。
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