我的愛球史 第16話 日本プロ野球の一番長い日 

 10.19・・・どの球団を応援しているにせよ、プロ野球ファンなら誰もがこの響きを聞くとき、胸の痛みと郷愁で心が一杯になるのではないでしょうか?

 昭和最後のパリーグ優勝決定。

 Wヘッダー。

 稀に見る好ゲーム。

 勝利への執念。

 無情な引き分け。

 今は無い球団、もう見ることのできないユニフォーム。

 もうプロ野球の試合が行われることのない球場。

 吹きぬける秋風。

 永遠に消え去った日本一への夢・・・。

 僕はこの日の記憶はなぜか曖昧です。

 あれから22年経ち、10.19に関する様々な本を読んだり映像を見たりしているので、どれが自分がリアルタイムでみたもので、どれが後から記憶に付け加えられたものなのか分からなくなってきました。

 ただ覚えているのは「近鉄優勝ならず」を伝えるニュースステーションの久米宏さんの顔。

 今、色んな資料を見て10.19を振り返ると、複雑に絡み合った様々な条件があのドラマを演出し、近鉄とロッテの両チームが集中力の極限の中で戦っていたことが分かります。

 まず、当時のルールではWヘッダー第1試合は延長戦が無く9回で決着しなければならなかったこと。

 そして、第2試合は延長12回まで認められていたものの4時間を超過した場合、次のイニングに入れなかったこと。

 近鉄優勝にはこの条件の中での2連勝しかなかったこと。

 これだけでも優勝を目指す近鉄には実に厳しい戦いであったことが分かります。

 今、気持を抑えて敢えて淡々とスコアを振り返ってみたいと思います。

 第1試合

 近鉄 0 0 0 0 1 0 0 2 1 =4  小野、吉井、阿波野―山下、古久保、梨田
 ロッテ2 0 0 0 0 0 1 0 0 =3  小川、牛島―斎藤、小山、山下
 勝 吉井(10勝2敗24S) 
 負 牛島(1勝6敗25S)
 S 阿波野(14勝12敗1S)
 本 鈴木20号(小川)、愛甲17号(小野)

 第2試合

 近鉄 0 0 0 0 0 1 2 1 0 0 = 4 高柳、吉井、阿波野、加藤哲、木下―山下、梨田
 ロッテ0 1 0 0 0 0 2 1 0 0 =4 園川、荘、仁科、関―袴田
 本 吹石2号(園川)、真喜志3号(園川)、ブライアント34号(園川)
    マドロック(高柳)、 岡部11号(高柳)、高沢14号(阿波野)

 このスコアを見るだけでも、両軍が死闘を尽くしたことがわかる気がします。ども、ファンそれぞれに胸に残るプレーがあると思います。数字で全てを物語ることはできません。

 そして、このスコアだけを眺めているだけじゃ、第2試合に9分間の抗議による中断があったことも分からない・・・。

 語り継ぐ人がいなければ、何百年後かにはこの試合も僅差の勝率(0.014差)で「優勝を分けたゲームのスコア」としてしか認識されないかも知れません。

 しかし、沢村栄治を見たことのない我々が戦前の大エースに思いを馳せ、ベーブ・ルースの豪打を想像するように、「10.19」の激闘は近鉄球団と川崎にあった「ロッテ オリオンズ」の名とともに後世に語り継がれていくことでしょう。

 そして、この昭和63年10月19日という日は、阪急ブレーブスの歴史がシーズン終了を以って閉じられることが明らかにされた衝撃の日でもあるのでした・・・。

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