僕の甲子園物語 第11話
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こじっく
2010年05月20日 22:03 visibility132
こうして、S君も僕もそれぞれに苦しい夏を終え、身につけた力を発揮する秋を迎えた。
とはいえ、僕は実習を終えて週5日働き2日休む・・・という生活に戻っただけなのだが。
S君の所属するK高校は県の秋季大会緒戦から順調に勝ち、3回戦を迎えた。
僕は3回戦が皇子山球場で行われることを確かめると、電車に乗って出かけた。
K高校を応援するためである。
無論S君がマウンドに立つかどうか分からない。
でも、とにかく行ってみようと思った。その上でS君の姿が見られたら良いと思った。
球場はセンバツ出場校であるK高校の試合とあってまずまずの観客数だったが、余裕でバックネット裏に座れた。
スターティングオーダーが発表される。
場内アナウンスでK高校のピッチャーが告げられる。
S君だった。
目の前で起きている現実は、僕にとってまず嬉しいことのはずだったが、信じられなかった。
そして、次に起こる気持ちと言うのは・・・頼む・・・頼むからK高校を、S君を勝たせてくれ・・・という祈りだった。
試合が始まった。
S君がまともにマウンドで投げる姿を見るのは初めてである。
オーバースローのダイナミックなフォーム。
左腕から投げ下ろされる速球。
そして、変化球は蝶がバタバタ舞うように空中を漂ってキャッチャーミットに吸い込まれる。
見事な緩急だ。
とにかく、最初のアウトがピッチャーゴロだったのは覚えている。
ホッとした。
その後も順調にアウトを重ねてゆくS君。
しかもバントヒットでチーム初安打まで記録する。
絶好調である。
4回にK高校は1点先制。
よし、試合の主導権はもらった。
しかし、対戦相手の滋賀学園もF投手が素晴しいピッチングを見せる。
K高校はランナーは出すものの、走塁ミスが出たりしてなかなか追加点が奪えない。
1−0のまま試合はどんどん進んでいく。
こうなるとS君の完封がみたい。
アウト一つ取るごとにその期待が高まる。
そして気になるその疲労具合。
8回表だった。
滋賀学園の攻守に素晴しいセンスを見せていたT遊撃手がバットを振りぬいた。
打球は高く舞い上がり、悲鳴とともに左中間へ消えた。
同点ホームラン。
しかしS君は後続を断つ。
9回も両チームとも得点を刻めず、延長戦に突入する。
10回もS君がマウンドに上ったが、この頃になると疲れは隠せない。
制球に苦しむようになってきた。
それでも何とかしのぎ、得点は許さない。
しかし、延長戦が進むごとに球威も衰える。
この試合何度目かのピンチを迎え、2塁にランナーを背負った場面で無念の降板。
後を引き継いだのはまだあどけなささえ残る後輩の1年生投手K合君だった。
S君に比べると一回り体が小さく見えた。
大丈夫かな・・・。
しかし、それは余計な心配だった。
K合君、見事に後続を抑える。
マウンド上での動きも軽快である。
体からあふれる野球センス。
K高校、S君の他にこんないいピッチャーいたんだ。
K合君はフィールディングが上手く、どんどん打球に飛び込んでいく。
ガッツあふれるプレーで倒れこみアウトを奪った。
その直後ファーストを守る背番号1のT山君が「よくやったね」と言う具合にファーストミットでK合君の背中をトントン叩く。
K高校、良いチームだなぁ・・・。
改めてそう思った。
そして、試合の結末は・・・・!!!!
(写真と記事は関係ありません)
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