僕の甲子園物語 第11話


 こうして、S君も僕もそれぞれに苦しい夏を終え、身につけた力を発揮する秋を迎えた。

 とはいえ、僕は実習を終えて週5日働き2日休む・・・という生活に戻っただけなのだが。

 S君の所属するK高校は県の秋季大会緒戦から順調に勝ち、3回戦を迎えた。

 僕は3回戦が皇子山球場で行われることを確かめると、電車に乗って出かけた。

 K高校を応援するためである。

 無論S君がマウンドに立つかどうか分からない。

 でも、とにかく行ってみようと思った。その上でS君の姿が見られたら良いと思った。

 球場はセンバツ出場校であるK高校の試合とあってまずまずの観客数だったが、余裕でバックネット裏に座れた。

 スターティングオーダーが発表される。

 場内アナウンスでK高校のピッチャーが告げられる。

 S君だった。

 目の前で起きている現実は、僕にとってまず嬉しいことのはずだったが、信じられなかった。

 そして、次に起こる気持ちと言うのは・・・頼む・・・頼むからK高校を、S君を勝たせてくれ・・・という祈りだった。

 試合が始まった。

 S君がまともにマウンドで投げる姿を見るのは初めてである。

 オーバースローのダイナミックなフォーム。

 左腕から投げ下ろされる速球。

 そして、変化球は蝶がバタバタ舞うように空中を漂ってキャッチャーミットに吸い込まれる。

 見事な緩急だ。

 とにかく、最初のアウトがピッチャーゴロだったのは覚えている。

 ホッとした。

 その後も順調にアウトを重ねてゆくS君。

 しかもバントヒットでチーム初安打まで記録する。

 絶好調である。

 4回にK高校は1点先制。

 よし、試合の主導権はもらった。

 しかし、対戦相手の滋賀学園もF投手が素晴しいピッチングを見せる。

 K高校はランナーは出すものの、走塁ミスが出たりしてなかなか追加点が奪えない。

 1−0のまま試合はどんどん進んでいく。

 こうなるとS君の完封がみたい。

 アウト一つ取るごとにその期待が高まる。

 そして気になるその疲労具合。

 8回表だった。

 滋賀学園の攻守に素晴しいセンスを見せていたT遊撃手がバットを振りぬいた。

 打球は高く舞い上がり、悲鳴とともに左中間へ消えた。

 同点ホームラン。

 しかしS君は後続を断つ。

 9回も両チームとも得点を刻めず、延長戦に突入する。

 10回もS君がマウンドに上ったが、この頃になると疲れは隠せない。

 制球に苦しむようになってきた。

 それでも何とかしのぎ、得点は許さない。

 しかし、延長戦が進むごとに球威も衰える。

 この試合何度目かのピンチを迎え、2塁にランナーを背負った場面で無念の降板。

 後を引き継いだのはまだあどけなささえ残る後輩の1年生投手K合君だった。

 S君に比べると一回り体が小さく見えた。

 大丈夫かな・・・。

 しかし、それは余計な心配だった。

 K合君、見事に後続を抑える。

 マウンド上での動きも軽快である。

 体からあふれる野球センス。

 K高校、S君の他にこんないいピッチャーいたんだ。

 K合君はフィールディングが上手く、どんどん打球に飛び込んでいく。

 ガッツあふれるプレーで倒れこみアウトを奪った。

 その直後ファーストを守る背番号1のT山君が「よくやったね」と言う具合にファーストミットでK合君の背中をトントン叩く。

 K高校、良いチームだなぁ・・・。

 改めてそう思った。

 そして、試合の結末は・・・・!!!!

(写真と記事は関係ありません)

 
 

 

 
























































































































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