僕の甲子園物語 最終第20話


 こうしてK高校を巣立ったS君は京滋大学リーグに所属する大学の野球部に入り、今もピッチャーとして活躍している。

 京滋大学リーグは現在佛教大学が頭一つ抜け出した強さを誇っている。

 佛教大学にはS君の一つ上の先輩でショートを守っていたN内野手も所属している。

 先日、僕が見に行った試合では敵味方に分かれてしまった二人を見て複雑だった。

 当の両選手にとってはその気持は僕以上にあると思う。

 しかし、白球の介在する真剣勝負の前に、そんな感情は昇華されてしまうことも、グランドに立つ選手にとっては当たり前のことなのだろう。

 S君の一つ上の学年のA主将は関西六大学野球リーグに所属する大学でプレーを続けている。

 同じく先頭打者を務めていたM選手は東都大学野球でプレー。

 S君と同学年に目を移せば、T山投手は関西学生野球リーグの強豪チームに。

 東北、横浜高校を破ったS君の下の学年では、エースのK合投手は広島県の社会人チームに。

 センバツ第600号ホームランを放ったI川選手は東京六大学の名門チームに在籍してプレーを続けている。

 僕にとってのスターであるK高校の選手はユニフォームが替わっても輝き続けている。

 僕はK高校のOBでないし、S君以外のK高校の選手を直接知っているわけでもない。

 僕はただS君の家庭教師を2年間だけしたことのある運動音痴の野球ファンでしかない。

 しかし、僕はS君とK高校野球部のお陰で、思いもしなかった経験を自分自身がすることができた。

 人生を豊かなものにしてもらえた。

 そのことをとても感謝している。

 日本には甲子園という世界に誇る素晴しいボールパークがあり、選手権大会と選抜大会という二つの熱く誰もが夢みる大会がある。

 誰もが思い出に残る試合を、忘れられないチームを、大好きな選手を心に持っていると思う。

 ゆえに、誰もが心の中に自分だけの「甲子園物語」を綴っている。

 僕は、そう思うのだ。

 ありがとうS君。

 ありがとうK高校。

 ありがとう甲子園。

 ありがとう、野球。


(記事と写真は関係ありません)


















































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