ズレータ問題を考える

  • HiRO
    2006年12月01日 02:10 visibility677

予兆はあった。

今季を終え帰国するズレータは、成田で「野球はビジネス」と、かつて「福岡で野球人生を終えたい」と語った気持ちと条件交渉は別とばかりに、交渉難航を予感させるかのような発言を残している。

そして、伝えられた、複数年にこだわるズレータ側と単年にこだわる球団側の平行線。
11/30、パ・リーグ会長へ提出された契約保留選手名簿にズレータの名前はなく、明日からズレータは日米全球団との交渉が可能となる。

これは、ズレータとの契約に、契約保留選手名簿のパ・リーグ会長への提出期限となる11/30までに契約更新が成立しなかった場合、どの球団とも交渉が可能となるFA(自由契約)とするという条項が盛り込まれていたことによるものらしい。


外国人選手との契約交渉においては、往々にしてあることで、これで交渉決裂が決したわけではないし、また、これが交渉上、一概に不利になるということでもない。が、今回、竹内孝規球団常務COOは「マネーゲームはしない、条件吊り上げには応じない」ということをしきりに口にする。

この言葉を額面通りにとれば、これはこれで、球団としての考え方だから、ファンがどうこう言う類のものではない。
報道を見るに、その背景には、ソフトバンクとなってからの外国人戦略の失敗があるようだ。
バティスタ、カラスコと2年の巨額の契約を結びながら、1年で契約を解除。球団は2年分のフィーを支払うという高い授業料を払っている。とはいえ、バティスタの場合、普通なら、すんなり2年目もあって然るべき状態だったと思う。バティスタの契約解除は、王監督が若手を育てる=起用する為に敢えて選択した。だが、背広組にそんなことは関係ないのだろう。ソフトバンクとなってからの巨額の契約失敗ばかりが目立つ結果に終わっている。

が、それでズレータとの複数年契約を渋るのは、いかがなものだろう?

外国人選手の成功は、日本野球と日本という環境への適応力が大きく左右する。
その点では、下手に、他の外国人選手獲得というオプションを考えながらズレータと交渉するのではなく、2003年の来日以来4年に渡って、既に充分な実績を残しているズレータとの契約成立こそ最優先だろう。

実際、4年間で計122本塁打の実績を残しているのだ。複数年にしても良さそうなものだ。現に、前回契約は2年と複数年。松中7年や小久保4年の長期契約だって当然知っているはず。本人は「福岡でユニフォームを脱ぎたい」と語っている。複数年契約を希望していることも知っていながら、球団の提示は単年。これではズレータ本人もガックリだろう。

球団は、最終的には、球団側に2年目のオプションがある複数年も用意しているとの報道もあり、また、竹内常務執行役員の「どのカードをどう切るかだ。」との発言もある。
もちろん、代理人の思惑通りに運ばせない交渉も必要だろうが、「条件吊り上げには応じない」といっておきながら、奥の手のカードを用意し、どのタイミングで切るのか計っているのだとしたら、ビジネスの「交渉」としてはともかく、少なくとも、選手という「個人事業主」に対して、球団という「会社」が行う、誠実な条件提示ではないという印象を受ける。

もちろん、球団の外国人戦略の失敗を繰り返せないという事情は理解するし、外国人選手の場合、間に代理人が入るのもあって、条件吊り上げに敏感になるのもわからんではない。
が、これで本当に決裂したなら、ハッキリ言って本末転倒だ。
実績のない外国人選手と巨額の複数年契約をした失敗と、4シーズンに渡って日本野球への対応と成長という実績を残したズレータを同列に見てムキになっている印象しか受けない。


この背景には、旧態依然とした「助っ人外国人」、言わば、チームの戦略上、使い捨て可能な便利な選手という意識もあるに違いない。
若返りを図るチームにあって、複数年契約は若手選手の出番を奪う危険性もはらんでいる。そうした意識もありそうな気もする。

だが、この点を、どう見極め、意識を変えていくのかこそが、日本球界にとっても今後のチーム編成上の重要なポイントになると思うのだ。

かつてのバースやブライアント、ローズなどはチームの顔と言えるほどの存在となった外国人選手。が、後に当時の監督であった仰木彬によって打撃コーチとして日本球界への復帰を果たしたブライアントを除いて、いずれも実に残念な形で日本球界を去った。やはり、こうした過去にも「使い捨て」の意識が見てとれる。

本当にチームに馴染んで実績も残している選手に対しては、もっと日本人選手と同様に見ても良いのではないか。
ズレータが福岡に骨を埋めたいなら、引退後だって外国人のための打撃コーチ兼相談役という立場だって単純に考え得る。それこそ外国人戦略上重要なポジションとなりうるし、更に言えば、外国人のために限定して考える必要もない。

毎打席ごとにベンチに戻ってメモをとる姿。子供病院に足を運び涙する姿。ゲーム前のウォーミングアップを外野のファンの近くで行い、フェンスの側を通りながらファンの声援や握手に応えながらベンチに戻る姿、そしてお立ち台で博多弁でファンを喜ばせるズレータの姿は、若い選手の手本にもなるはずだ。実際、川崎宗則は試合前のウォーミングアップをズレータと共に行っている。
それが、チームの財産にもなるし、また、野球の国際化にも必ず役に立つはずだと思うのだが。

外国人戦略の失敗は失敗として、反省すべき点は大いに反省して貰って結構。だが、それを杓子定規に考え、本当に必要な選手まで失うことになっては本末転倒。
かといって、代理人の言いなりになる日本球界であってもならない。

ソフトバンクの手腕に注目したい。

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