去り行く者たちの記録と彼らへ贈る言葉 2012(1) 東野峻と山本和作
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舎人
2012年11月25日 06:47 visibility4348
巨人のユニフォームを脱いで引退したり、他球団に移籍することが決まった選手たちの話を今年もしたいと思います。本当は時間もないのでまとめて一回で終わりにして、ルーキーたちの話を始めるつもりでした。しかし、動画をまとめ、それぞれの選手たちの足跡を辿るということは、掘り下げ始めれば、どんどん深いものが出来上がってしまいます。ある程度納得の行くものを作り始めたら、とても一回では済まされないものになってしまいました。そこで、3回から4回に分けてこの話をしていきたいと思います。選手によっては録画はしてあるものの、まだ紹介していない動画をアップしていきたいと思います。一回目の今日はオリックスへトレードが決まった東野と山本についてです。
東野峻(26)投手 オリックスへ移籍
東野は本当は巨人に指名される予定ではなかった投手だと思います。あの年のドラフトを振り返ってみると、自由獲得枠で野間口と一場の両取りを目指していたものの裏金問題で一場の指名を断念することになり、下位で指名予定だった三木を繰り上げで自由枠へ。その空いた下位での投手予定枠に東野が滑り込むように指名された感じでした。この年の巨人の指名としては最後の7巡目指名でした。ほとんど誰からも期待されていない入団だったと思います。しかも、入団後に足首にケガをしてルーキー時はほとんど登板することがありません。2年目もファームで勝ち星なし。防御率も9.69と散々な成績でした。この時点ではおそらく戦力外の可能性もあったことでしょう。そして、今度は東野に移籍の話が浮かびます。FAで移籍してきた門倉の人的補償として、横浜が要求するのではないかというものでした。なんでも先に横浜に移籍していた仁志が「必ず出てくる投手だから」と横浜首脳陣に推薦したとか。実際の人的補償は工藤だったのですが、なんとも心もとない巨人での道筋を東野は歩んできたということです。東野の躍進は3年目2007年からでした。ファームでリリーフとして頭角を表し、その年の秋に一軍に昇格すると、翌2008年にはついに一軍定着を果たし、リーグ優勝に貢献。2010年はチームで唯一、一年間ローテーションを守り、8勝をマーク!一昨年は13勝でチームの勝ち頭、昨年は開幕投手です。右のエースとしてすっかり存在感を示し、広島のマエケンと並び称せられるまでになったのでした。巨人の投手陣では頂点に昇り詰めた感のある東野でしたが、昨年の統一球導入に苦しみます。独特のスライダーの変化が早過ぎて制御が利かないとのこと。8勝を挙げましたが、負けは13と大きく負け越しました。そして、今年はオープン戦で好調だったものの、一軍昇格テストのファームの試合で打ち込まれて、昇格を見送られます。その後、何度となく昇格のチャンスがありましたが、今ひとつ調子に乗れなかったり、夏場に肩肘の違和感もあったりして、ほとんど登板の機会がありませんでした。結局今年の登板は6月初旬の西武との交流戦1試合のみ。残念な一年になってしまいました。誰からもほとんど期待されていない1、2年目から台頭し、ついにはトップに昇り詰め、時代の転換期で低迷期に入ってしまった。二十代半ばにして、そんな波瀾万丈な野球人生を東野は送ってきたのです。
東野にはシーズン中からトレードの噂がありました。しかし、まだ、26歳で2008年から2011年までの4年間で31勝を挙げている投手を簡単に放出するはずがないと私は思っていました。いくら不調とはいえ昨年だって8勝を挙げている。そんな貴重な戦力を簡単に出せる余裕があるのだろうか?一説には東野本人が移籍を志願したとか。確かに、過去にも巨人は移籍を志願した木佐貫をオリックスへトレードで送り出したことがあります。今回も似たケースかもしれませんが、当時30歳になろうとしていた木佐貫と、26歳の東野では価値が違うでしょう。球団としては菅野が入る訳だし、同じ右の先発要員を抱えておく必要性はないとは判断したのかもしれない。しかし、私は東野の本質はリリーバーだと思う。交換要員の香月が巨人で戦える球威を取り戻すよりも、東野がリリーフに転向した方が使える可能性は高いと私には思える。しかも、昨日の報知によると、投手陣をシャッフルするとのこと。どうして周りは「もう少し巨人で頑張り、来年こそ復活ように」と説得しなかったのか?まるで30後半のベテランが、最後に一花咲かせたいからと志願をし、それに球団が応えたような話です。
こんな簡単に主力選手を放出することは、何かしらのスキャンダルが無い限り、今までの巨人ではありえない話です。今回のトレードはそのように、あたかも、最初から東野の放出は決まっていたかのような話の進みぶりだったと思います。トレードがあったとしても、フロントと首脳陣と東野本人が、ギリギリまで膝を突き合わせ、納得が行く結論を出して欲しかったと思います。それは球団に貢献した東野に対する配慮でもありますが、同じように出場機会を求めて潜在的に移籍願望のある選手たちへの「示し」にもなるからです。そんなに簡単にトレードさせてしまっては追従する選手が現れないとも限りません。
東野は限りなくゼロに近い縁から巨人に入団し、何度となく戦力外や放出の危機を乗り越えて巨人の勝ち頭にまでなった投手です。アマの時代から注目されてきた選手が多い巨人において、非常に珍しい存在だったと思います。裏金問題で地に落ちていた時のチームに入団したということで、新しく育成に舵取りを切った新生巨人の象徴的な存在だったと私は思っていました。今年の不調は技術的なことが主でしょうが、気持ちで投げるタイプなだけに、メンタル面で行き詰まりを感じていたこともあったと思います。それを巨人で乗り越えて欲しかったと思いましたが、移籍が決まったからにはオリックスでなんとか復調して欲しいと思います。あの独特の球筋のスライダーは、まだ見慣れないパ・リーグでなら当面の間効果絶大でしょう。結果を重ねることで、メンタル面での充実を図り、完全復活を遂げてくれたらと思います。
東野の話をさらに詳しく知りたい方は2010年7月の日記を読んで欲しいと思います。動画はかなり作った作ったつもりでしたが、ニコニコやYouTubeにはあまりアップしていなかったようです。私が動画サイトを多用するようになったのは、東野が一軍の主力選手になってからだからです。
東野に関する日記
祝11勝目!ジャイアンツのエースになった東野について・ブレイク寸前の動画アップ 2010/07/05
東野の阪神三連戦初戦起用の狙いとは?2010/07/15
立教大に惨敗した巨人の第2二軍 一軍復帰を目指す東野の投球 2012/08/27
東野に関する動画
一軍定着直前の東野峻の投球 2008年3月〜5月
一軍復帰を目指す東野の投球 2012年8月26日
山本和作(26)内野手 オリックスへ移籍
昨年と今年に限って言えば、大田、中井、橋本に次いで注目していたのが山本でした。「今年期待をよせる・・」に詳しく書いていますが、本当にドラマチックな道のりを歩んできた選手でした。大学時代は地方リーグの首位打者として、巨人には打撃を期待され育成選手として入団。しかし、入団後、二軍ではパッとしないものの、チャレンジマッチやシリウスの試合では結果を残すといったプロとしての力量不足がハッキリと分かる選手でした。この年のルーキーとしては一番印象が薄く、この年限りの可能性も感じていたほどでした。おまけに2年目のキャンプで大ケガをし、1年のほとんどを棒に振ってしまいます。私は山本のことなど記憶の片隅からすっかり消え去っていました。ところが3年目の昨年の春季教育リーグで、バットを極端に短く持つフォームで、いきなりホームランを放ちます。ヒットも出まくり、イースタンが開幕すると、一時は5割を超えるアベレージの大活躍です。一年でクビどころか、ケガの影響をもろともせず、7月にはついに支配下入りを果たしてしまったのでした。その後、一軍の練習に参加するまでになっていたものの、昨年の秋のフェニックスリーグで自打球を膝に当ててしまいます。これが思いの外重症で、手術を伴うものだったために、山本はまたも育成に降格させられてしまったのでした。今シーズンはケガからの復活を目指すスタートでした。5月の末にようやく実戦復帰をするとまずまずの結果を残し、7月に再び支配下登録されることとなりました。ただし、どうも完全復調という訳ではなく、昨年、チームの本塁打王だった長打力は影を潜めてしまったまま。山本にその長打力がようやく戻ったのは、シーズン終盤の9月になってからでした。9月8日から14日までの間に3本塁打、来シーズンに繋がる活躍でした。フェニックスリーグに入っても山本は3割を超える打率で大田や中井たちよりも結果を残したようです。まるで七転び八起きとは山本のためにあるようなことわざのような気がしてきます。
今回のトレードは東野とバーターだった訳ですが、オリックスの森脇監督は非常に山本のことを評価しており、来シーズンのサードのレギュラー候補とまで言っています。山本にとっては実に運の良いトレードだったと思います。山本がこのまま巨人にいてもチャンスはかなり後回しにされていたでしょう。右のスラッガータイプとしては大田や中井、ルーキーの坂口が優先起用され、育成出身の山本には彼らが一通りチャンスを与えられ見極められてから、ようやく順番が巡ってくる感じだったと思います。ファームで結果を残すことよりも、原監督の前でプレーすることが何よりも大事な今の巨人では、来シーズンの山本の立ち位置は微妙なものだったでしょう。私はいくら数がいても良い投手と違って、タイプの重なる選手のいる野手については、トレードもありだと思っています。ましてや大卒で入団4年目の選手なら仕方ないと思います。
山本は技術的にしっかりとした打撃の形ができており、オリックスに行っても成功する気がします。もしかしたら、東野よりも可能性があるかもしれません。しかし、ケガが付いて回るのが心配です。2度あることは3度あるかもしれません。無事を祈るばかりです。
山本のことはラボーラで散々話してきました。ルーキー時からその後に至る注目の度合いの変化に我ながら驚きます。動画もたくさん作りました。
山本に関する日記
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山本和作 左中間タイムリー二塁打!平成24年5月25日
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山本和作 マルチヒット!2012年7月8日
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山本和作 マルチヒット!2012年9月15日
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正直、今回のトレードは性急過ぎたと思っていますし、東野に関しては残念で惜しい気がします。しかし、彼らには絶対に移籍先で成功して欲しいと思います。彼らのようなドラフト最下位や育成で入団した選手たちが成功することが、育成の大切さを証明することになるからです。巨人は第二二軍を実質的に廃止したように、育成制度を変えようとしています。それ自体が悪いことだと思っていません。しかし、十分な検証も無く事が進み過ぎている気がするのです。今の監督の元で上手く回転していることが、次の監督には当てはまるとは限りません。常に事態を想定して編成のチャンネルを作っておく事が私には必要だと思えます。東野や山本が活躍して、本当の意味で巨人の恩返しになることを私は期待しています。
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